ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリット・デメリット|後悔しないためにリスクも知っておこう

ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリット・デメリット

2024年9月26日

ASUCAアイクリニック仙台マークワン主任執刀医 野口三太朗

監修医師 野口 三太朗(のぐち さんたろう)

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2006年、東北大学医学部卒。複数の病院で腕を磨き、2021年に大阪大学大学院博士課程修了。2022年、ASUCAアイクリニック仙台マークワン主任執刀医に就任。 数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。

ICLとは眼内コンタクトレンズのことで、眼の中に小さなレンズを挿入する治療法です。ICL手術は近視・遠視・乱視を矯正し、裸眼でクリアな視界を取り戻せます。しかし、術後のリスクや高額な費用の負担があるのも事実です。

この記事では、ICLの特徴やメリット・デメリット、期待できる効果と術後のリスク、さらには費用や治療に向いている人などについて解説します。メリットだけでなくデメリットもしっかり知ることで、後悔することなくICL手術を受けられるでしょう。

また、ICLとレーシックの違いも説明しているので、視力を回復したい人はぜひ参考にしてみてください。

ICLとは?眼の中に特殊なレンズを挿入する手術

ICLとは

ICLは、眼科で行われる手術療法の一つです。「Implantable Contact Lens」の略称で、眼内コンタクトレンズとも呼ばれます。特殊な眼内レンズを虹彩と水晶体の間に挿入して、近視・遠視・乱視などの屈折異常を矯正することで視力回復を図ります。

ICL手術は、角膜を削らないのが特徴です。万が一、将来的に白内障などの手術が必要になった場合でも、レンズを入れ替えたり取り出したり可能です。

また、ICLは高度な近視や乱視にも効果があります。手術の際に度数の調整も行われることから、患者さん一人ひとりに合わせて、裸眼でも適切な視力を手に入れられるでしょう。

ICLとレーシックの違いを解説

ICLとレーシックの違い

ICL手術とレーシック手術は、角膜への影響という点で大きく異なります。ICLは角膜を削らない手術です。レンズを挿入するだけなので、角膜そのものにダメージは生じません。

一方、レーシックは角膜をレーザーで削る手術です。レーシック後は角膜が変化するため、もし視力に問題が生じた場合には対処が難しくなります。また、レーシックでは近視が再発する可能性がありますが、ICLの場合は近視の戻りが少ないです。

ここでは、ICLとレーシックの違いを詳しく解説します。

ICLは角膜を削らない|万が一の時は元に戻すことが可能

ICL手術は、角膜を削る必要はありません。数ミリほどのごく小さな穴を開け、そこから眼内レンズを挿入します。仮に術後に何らかの問題が生じたとしても、入れたレンズを取り出せば、元の状態や度数に戻ります。

このようにICLであれば、万が一のときにも対処できるのが大きなメリットです。

レーシックは角膜を削る|近視が戻る可能性がある

レーシック手術は、簡単にいうと角膜を削って屈折を調整する治療です。まず角膜にフラップ(薄い蓋のようなもの)を作り、フラップをめくって角膜にレーザーを照射することで、カーブを調整します。

レーシックは、視力回復として広く普及している治療法です。しかし、手術によって形状を変化させた角膜は、時間の経過とともに元に戻ろうとします。そのため、近視が再発する可能性があるとされています。

ICLの3つのデメリットとリスク

ICLのデメリット

レーシックと違い、角膜を削らないのが特徴であるICLですが、以下のようなデメリットやリスクが存在します。

  • ハロー・グレア現象が起こる可能性がある
  • 手術を受けるまでの期間が2〜4ヶ月ある
  • 自由診療だから費用が高い

ここでは、ICLのデメリットやリスクについて詳しく解説します。

①ハロー・グレア現象が起こる可能性がある

ICL手術後はまれに、光がにじんだり、花火のようにまぶしく見えたりする「ハロー・グレア現象」が起こる可能性があります。ただし、これは術後数ヵ月すると脳が順応し、緩和ケースが多いです。とはいえ、あまり気になる場合には医師に相談するようにしましょう。

また、術後は感染症のリスクもあるため、定期検査が欠かせません。ICL手術による合併症の可能性は低いとされていますが、発生しないとは限りません。リスクの有無を十分理解することが重要です。

また、確率は高くないものの、手術に一般的にみられる合併症や副作用としてICL手術にも下記を伴う可能性があり、報告されています。
結膜炎、急性角膜浮腫、持続性角膜浮腫、眼内炎、ハロー・グレア現象、前房出血、前房蓄膿、眼感染症、レンズ偏位、黄斑浮腫、瞳孔異常、瞳孔ブロック緑内障、重篤な眼炎症、虹彩炎、硝子体脱出、角膜移植。
また、こちらもまれですが、炎症や角膜内皮減少、高眼圧、白内障などの合併症が起こった場合は追加の手術処置が必要になることがあります。
引用:先進会眼科

②手術を受けるまでに数ヵ月かかる場合がある

国内に患者さん本人に適したICLの在庫がある場合、検査後翌週には手術可能です。本人に適したICLの在庫が無かった場合は製造する必要があり、完了まで数ヵ月~半年程度待つ場合があります。

その他、人気のクリニックの場合、手術の順番待ちによって数日~数週間待ち時間が発生する場合もあります。

③自由診療だから費用が高い

ICLは保険適用外の自由診療です。病気やケガで受診する際には、保険診療で医療費は3割負担で済みますが、ICLやレーシックは対象外です。そのため、手術費用は全額自己負担となります。

両眼手術の場合、手術を受ける病院やクリニックにもよりますが、概ね50万円前後の高額な医療費がかかるため、治療費の負担が重いのが現状です。ICLを検討中の人は、費用の負担を考慮する必要があるでしょう。

ICLが向いていない人はすでに白内障の症状がある人

ICLがむいていない人

40代以降ですでに老眼が出ている方は、左右のターゲット度数をアレンジしたモノビジョン法や、老眼矯正の機能のついたICL・IPCLの選択が良くなってきます。

また、すでに白内障の症状が出てきてしまっている方は、白内障手術にて近視などを矯正した方が、より良い視力を獲得できます。

ICLの3つのメリット

ICLのメリット

ICLのデメリットやリスクについて解説しましたが、もちろんメリットもあります。

ここでは、ICLの3つのメリットについて詳しく解説します。

①強度近視の人でも対応可能

ICL手術は、-6.00ディオプトリーといった強度の近視でも対応可能です。コンタクトレンズや眼鏡では補正しきれないほどの高度な近視であっても、ICLなら手術が可能です。

通常のレーシック手術では強度近視への適応が困難な場合が多いですが、ICLはむしろ強度近視であるからこそ視力回復効果が大きいというメリットがあります。ただし、-15.0Dを超える強度近視の場合は、慎重な適応判断が必要です。

②基本的にメンテナンス不要

ICL手術の大きな魅力は、良好な結果が得られた場合、術後の日常的なメンテナンスは基本的に不要なことです。レンズの寿命は人の寿命よりも長いとされ、半永久的に使用できるほか、定期的な点眼や薬の使用といった視力維持のためのケアは必要ありません。

ICLを入れるだけで視力が安定して回復するため、術後は何も気にせず普通に生活できます。メンテナンスフリーであることは、ICLを選択する大きな理由になるでしょう。

 

ただし、術後の感染症や合併症のリスクがあり、長期的には白内障のリスクが増加する可能性もあります。また、サイズや度数の不適合、ハロー・グレアなどの問題が生じる可能性があるため、定期的な眼科検診は受けるようにしましょう。

③長期的な視力の安定が期待できる

ICLは数ミリほどの切開創からレンズを挿入するだけの手術なので、感染症のリスクも低く、個人差はあるものの長期的に視力が安定します。近視の再発や老眼の進行による視力への影響もほとんどありません。

ICLでは、眼鏡やコンタクトレンズなしで安定した視力を保てる期間が非常に長いのが大きな特徴です。完全にリスクフリーではありませんが、視力の戻りを防ぎ、安定した状態を保てる手術といえます。

ICLが向いている人はコンタクトや眼鏡で過ごすことが困難な人

ICLに向いている人

ICL手術は、コンタクトレンズの装用が困難な人や、ドライアイなどの症状に悩む人にとって有効な選択肢の一つです。また、高度な近視や乱視で眼鏡レンズが非常に厚くなったり、度数変化が頻繁になったりする場合にも、ICLを検討する価値があります。

コンタクトレンズや眼鏡に不満を抱えている人は、自分の眼の状態を理解した上でICLのメリットを考えてみることをおすすめします。

ICLで白内障になる可能性は極めて低い

ICLで白内障になるリスクは低い

ICL手術において、白内障になるリスクは極めて低いと考えられています。特に新型のホールICLでは、白内障のリスクは基本的にないとされています。従来型ICLでは1.1〜5.9%の白内障発症率がありましたが、新型ホールICLでは0.49%まで低下しました。

 

ただし、加齢による自然な白内障の発症は避けられません。なお、ICL手術後に白内障が発生しても、ICLを摘出して通常の白内障手術を受けることが可能です。

 


ICLは水晶体の近くに挿入するため、術後に白内障が稀に起こることがあります。中心部に孔が無い以前のモデルのICLでは、1.1〜5.9%の白内障が起こると報告されていますが、中心部に孔がある現在主流のホールICLでは、目の中の水の流れが、術前と同じように保たれるため、ホールICLが使われるようになってから白内障の発生率は0.49%と非常に低くなっていることが報告されています。ICLは近視が強い方が受ける事が多く、近視が強い方は白内障が起こる年齢がそうでない方に比べて若いことが知られています。このため、長期の経過の中で起こる白内障はICL手術によるものか加齢によるものかはっきりしない場合もあります。


引用:JSCRS(日本白内障屈折矯正手術学会)有水晶体眼内レンズ情報

ICLに関するよくある質問

ICLは痛いですか?

ICL手術では目薬の麻酔をかけるため、ほとんど痛みは感じません。

ICLの効果は何年もちますか?

ICLは、半永久的に効果が持続するといわれています。

ICLの術後は何日仕事を休めば良いですか?

ICL手術を受けた翌日は仕事を休んでください。また、体を使う仕事の場合には、ICL手術後3~4日間は休みましょう。

まとめ:ICLのデメリットは合併症の危険性・費用が高い・手術を受けるまでの期間が長い

ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリット・デメリットのまとめ

ICLには、視力改善という大きなメリットがあります。一方で、ハロー・グレアなどの術後合併症のリスク、自由診療による高額な費用、2〜4ヶ月の検査期間が必要といったデメリットもあります。

ICLの長所と短所をしっかりと理解し、ライフスタイルなども考慮したうえで、自分に合った近視矯正法を選んでみてくださいね。

この記事の監修医師

ASUCAアイクリニック仙台マークワン主任執刀医 野口三太朗

監修医師 野口 三太朗(のぐち さんたろう)

  • hp
2006年、東北大学医学部卒。複数の病院で腕を磨き、2021年に大阪大学大学院博士課程修了。2022年、ASUCAアイクリニック仙台マークワン主任執刀医に就任。 数万件に上る執刀経験を持ち、海外からの情報をいち早く取り入れ、治療に活かしている。世界初、日本発という臨床研究を多く手がけ、最新技術の導入に努める。
  • この記事を書いた人
伊藤 真実(Ito Mami)

伊藤 真実(Ito Mami)

健康・医療・美容ジャンルを得意とするライター。自ら施術やカウンセリングを受けて比較検証。さらに、専門的な知識を持つ医師への取材を重ね、信頼性の高いコンテンツ作りを心掛けている。