ICLで老眼は治る?老眼用ICL(遠近両用眼内コンタクトレンズ)のメリット・デメリット

老眼用ICL(遠近両用眼内コンタクトレンズ)のメリット・デメリット

2024年2月13日

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師

監修医師 郷 正憲(ごう まさのり) 徳島赤十字病院

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徳島赤十字病院 麻酔科医。 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。麻酔科医でありながら、他科の手術管理をしており幅広い範囲の疾患分野の知見をもつ。本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、目の中に専用のレンズを挿入し、近視・遠視・乱視を矯正する治療法です。ICL手術を受ければ、眼鏡やコンタクトレンズがなくても安定した視力を手に入れられます。

しかし、目の老化現象である「老眼」の場合はどうなのでしょうか。通常のICLは老眼に未対応ですが、現在は老眼用ICL(遠近両用眼内コンタクトレンズ)が登場し、注目を集めています。

この記事では、老眼に特化したICLについて、その効果やメリット・デメリットなどを詳しく解説します。老眼用ICLを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ICL(眼内コンタクトレンズ)は老眼には不向き

ICLは老眼には不向き

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、近視などの視力矯正を目的としています。適応年齢は18歳以上です。ICLは角膜を数ミリ切開し、レンズを挿入する手術が必要となります。

ICLは調整の余地がない固定式のレンズであるため、老眼になった場合に遠近両用の調整をするのは困難です。老眼になったらレンズの抜去や新しいレンズへの交換が必要になってしまいます。ただし、レンズの交換は予期せぬ合併症を発症する可能性があるため、医師とよく相談してから検討してください。

レーシックなど他の手術と比較すると、ICLは老眼には向いていないといえます。

老眼用ICL(遠近両用眼内コンタクトレンズ)なら老眼の矯正が可能

老眼の矯正なら「老眼用ICL」

老眼用ICLは、レンズの形状や材質を工夫することで、遠方と近方の両方の視力を補正できるよう設計されています。乱視やその他の屈折異常も同時に矯正可能です。老眼鏡とは異なり、レンズ1枚で近視と老眼の両方の視力低下を補正できるのが大きな違いとなります。

老眼用ICLは近視と老眼を同時に改善できるため、高度な老眼対応力があるといえるでしょう。老眼の症状に合わせて最適なレンズを選ぶことで、自然な視力回復が期待できます。

老眼用ICLは自由診療|費用相場は50万円

老眼用ICLは保険適用外の自由診療

老眼用ICLは、保険適用外の自由診療となります。費用は医療機関によって異なりますが、目安としてレンズ代込みで50万円前後が相場です。ただし、レンズの種類や追加オプションによっては、70万円を超えるケースもあります。

また、老眼用ICLは自由診療のため、施術する医師の経験と実績、使用するレンズの品質も重要なポイントです。50万円前後の費用は一見高額に思えますが、老眼用ICLなら生涯にわたって安定した視力を得られます。

老眼用ICLを検討する際には、費用だけでなく、専門性が高くて安全性が確かな眼科を選びましょう。

老眼用ICLの3つのメリット

老眼用ICLのメリット

老眼用ICLには、3つの大きなメリットがあります。

  • ピントが合わない屈折異常(近視・遠視・乱視)や老眼矯正が可能
  • 老眼鏡をかけずにモノが見えるようになる
  • 安全性が高く元の状態に戻すことも可能

それぞれ詳しく解説します。

①ピントが合わない屈折異常(近視・遠視・乱視)や老眼矯正が可能

老眼用ICLは、遠視・近視・乱視などの屈折異常とともに、加齢に伴う老眼を治療することが可能です。レンズの中央部と周辺部の屈折力を調整することで、老眼対応と乱視矯正を同時に行えます。

老眼鏡では補正しきれない視力低下も、老眼用ICLなら改善できます。特に、遠視と老眼を合併している方は、老眼鏡のみでは満足な視力が得られない場合があります。老眼用ICLなら遠視も老眼も同時に矯正してくれるため、大幅な視力向上につながります。

②老眼鏡をかけずにモノが見えるようになる

老眼用ICLは、老眼鏡を使わなくても、自然に近くのモノも遠くのモノも見えるようになります。コンタクトレンズを入れる手間も不要です。老眼対応力が高く、乱視も補正してくれるため、老眼の症状は大幅に改善します。

特に、スポーツやアウトドア活動を行う際には、老眼鏡を気にせず自由な視界が得られます。これは、老眼用ICLならではの魅力といえるでしょう。

③安全性が高く元の状態に戻すことも可能

老眼用ICLはレンズそのものの安全性が高い上に、老眼対応や乱視矯正に実績のある専門医による慎重な手術が行われます。また、効果がなくなった場合はレンズを抜去すれば、元の状態に戻すことも可能です。ただし、傷が付いた場合など完全に元に戻らない場合もあるため注意が必要です。

治療結果に満足できない場合にも、比較的低リスクで元に戻せるのが強みとなります。老眼用ICLは角膜を削らないため、近視手術のレーシックと比べると、合併症のリスクや後遺症が少ないのでおすすめです。

老眼用ICLの4つのデメリットと注意点

老眼用ICLのデメリット

老眼用ICLには多くのメリットがある反面、デメリットもあります。主なデメリットは以下の4つです。

  • ICLと比べると歴史が浅いため挿入実績が少ない
  • 夜間の光に対するハロー・グレアを感じやすい
  • 1点に焦点を合わせるICLと比較すると見え方の質がやや落ちる
  • 自費診療のため高額になる

1つずつ詳しく解説します。

①ICLと比べると歴史が浅いため挿入実績が少ない

老眼用ICLは、近視や乱視に悩む方にとって、視力の改善や老眼鏡の使用を減らす可能性がある治療法です。しかし、老眼用ICLはまだ歴史が浅く、通常のICLと比較して手術経験が十分に蓄積されていないのが現状です。

そのため、老眼対応ICLの手術を検討する際は、手術費用や治療方法の詳細を把握し、評判の良い医師や医療機関を慎重に選ぶ必要があります。治療前には、レーシック手術との違いや目薬などの手術後のケアについても情報を集めることが重要です。

患者一人ひとりの視力状態やニーズに合わせた適切なアドバイスによって、手術後の満足度を高めることができるでしょう。

②夜間の光に対するハロー・グレアを感じやすい

老眼用ICLを挿入した後は、夜間の光に対する感度が高くなるため、ハロー・グレアを感じやすくなる可能性があります。ハロー・グレアとは、夜道で対向車のヘッドライトや街路灯などの光がにじんで見える現象です。光の点がぼやけて広がったように見えます。

これはレンズが光をうまく集光できないために起こります。老眼用ICLは遠近両用の視力を実現するためにレンズ設計を調整している分、単一ピント用のICLよりもハロー・グレアを感じるリスクが高いとされています。

③1点に焦点を合わせるICLと比較すると見え方の質がやや落ちる

老眼用ICLは遠近両用の視野を確保するため、ICLに比べると見え方のクオリティが多少劣ります。文字がぼやけて見えたり、画像の鮮明さやコントラストが低下して視界が粗くなったりすることがあるでしょう。

これは、老眼用ICLが遠近のピントを同時に合わせるよう設計されているのが原因です。

④自費診療のため高額になる

老眼用ICLは保険適用外のため、レンズ代込みで50万円前後の費用がかかります。これは乱視矯正など他の手術と比較しても、高額な治療だといえます。老眼鏡に限界を感じている方は、十分な効果が見込めるか検討が必要です。

一方で、老眼用ICLは手術費用は高いものの、生涯にわたって安定した視力を得られる可能性があります。慎重な治療効果の確認と、費用対効果を比較した上で、老眼用ICLを選択する価値があるか判断すると良いでしょう。

老眼用ICLの手術の流れを解説

老眼用ICLの手術の流れ

老眼用ICLの手術の流れは、以下の通りです。

  • クリニックでカウンセリングと検査を受ける
  • 手術は日帰りででき時間は30分程度で完了

それぞれ見ていきましょう。

クリニックでカウンセリングと検査を受ける

まずクリニックで手術の説明を受け、自分の目の状態に適したICLの種類や強度を検討します。老眼や近視などの治療目的に合ったICLを選択することが大切です。続いて、眼圧検査や角膜形状測定などの検査を受け、手術の安全性を確認します。

ICL挿入の安全性と効果が高い評判のクリニックなら、精度の高い検査が受けられるでしょう。慎重な検査とカウンセリングをすることで、自分に合ったICLで安全に手術を受けられます。また、適正な費用のクリニックを選ぶのがポイントです。

手術は日帰りででき時間は30分程度で完了

手術当日は点眼などの準備をした後、老眼対応や乱視を改善する目的でICL手術を行います。局所麻酔を用いた日帰り手術で、入院は不要です。手術時間は片目につき15分程度、両目でも30分ほどで完了します。

手術が終わったら2〜3時間の安静後、自宅での安静加療に移行します。手術費用や治療方法、医師の評判などについては事前にしっかりと情報を集め、納得のいくクリニックを選ぶことが重要です。

老眼用ICLに関するよくある質問

ここでは、老眼用ICLについてよくある質問とその回答を紹介します。

ICLで老眼が進行することはある?

ICLによって老眼になりやすくなることはないとされています。

ICLを受ける場合の適応年齢は?

ICL治療は18歳未満は対象外です。また、白内障や緑内障のリスクがあるため、40~50代までが上限とされています。

白内障などで目の手術を受ける場合レンズは取り出せる?

ICLはレンズを取り出せるため、手術前の目の状態に戻せます。再度レンズを入れることもできますが、その場合は再手術が必要です。

まとめ:遠近同時に治療ができるメリット、高額なデメリット等を考慮しストレスのない視界を目指しましょう

老眼用ICL(遠近両用眼内コンタクトレンズ)のメリット・デメリットのまとめ

老眼用ICLには遠近両方の視力回復ができるメリットがありますが、自由診療のため高額である点はデメリットの1つです。また、老眼の進行や白内障などで手術が必要になったときのリスクも考慮しなければなりません。

老眼にお悩みの方も、自分のライフスタイルに合った治療法を選ぶことで、ストレスなく快適な視界を取り戻せる可能性があります。老眼用ICLが気になる方は、一度眼科に相談してみると良いでしょう。

この記事の監修医師

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師

監修医師 郷 正憲(ごう まさのり) 徳島赤十字病院

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徳島赤十字病院 麻酔科医。 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。麻酔科医でありながら、他科の手術管理をしており幅広い範囲の疾患分野の知見をもつ。本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
  • この記事を書いた人
伊藤 真実(Ito Mami)

伊藤 真実(Ito Mami)

健康・医療・美容ジャンルを得意とするライター。自ら施術やカウンセリングを受けて比較検証。さらに、専門的な知識を持つ医師への取材を重ね、信頼性の高いコンテンツ作りを心掛けている。