心肺蘇生法を身につける 家庭の医学

 突然目の前で家族が倒れたり、意識を失ったりしたら……。多くの人はあわててしまい、気が動転して、何をしたらいいかわからず、ただオロオロするばかりでしょう。
 救急隊が到着するまでに、市民のだれもができる最大限の努力――それが心肺蘇生(しんぱいそせい)法です。心肺蘇生(CPR〈シーピーアール〉:cardiopulmonary resuscitation)とは、心臓マッサージをするための胸骨圧迫と人工呼吸をあわせておこなうことです。
 この「心肺蘇生」と「AED(エーイーディー):automated external defibrillator(自動体外式除細動器)」による除細動、また、のどに食べ物などがつまって窒息し、心停止になるのを防ぐために異物を取り除く「気道異物除去」の3つの救命処置を1次救命処置(BLS〈ビーエルエス〉:basic life support)といいます。この1次救命処置は、特別な資格を必要とせずにだれでもおこなうことができます。倒れた人を助けるためには、すぐそばにいる市民(バイスタンダー:救急現場に居合わせた人のこと)の力が必要だということです。しかし、必要とされる瞬間に、救命・救急や応急手当ての本を読んでいる余裕はありません。
 前もって、的確な処置法を頭に入れておきましょう。また、消防署や日本救急医療財団、日本心臓財団、日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)が認定する団体、地域の病院などが開催する応急手当て講習会(認定された指導者が講義や実習を規定の教科書に従っておこないます)などに参加して、日ごろからとっさの場合に備えることも大切です。受講資格を認定されると、定期的に再研修もおこなわれます。
 ここでは、医療の専門職でない一般市民がおこなうことが推奨されている処置法に関して紹介します。

(執筆・監修:医療法人財団健和会 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問 箕輪 良行)