事故や災害にあったとき(交通事故) 家庭の医学

 交通事故死者数は減少してきています。2022年中の交通事故死者数は2610人で、1948年以降で史上最小となっています。1日平均の死者数は7.15人で、これは3時間21分に1人が交通事故で死亡していることになります。しかも、ふつうの市民が加害者や被害者になりますし、残念ながら交通事故はもっとも身近な外傷といえます。
 そして、交通事故を起こしたり、または、交通事故に遭遇したときは、すぐに負傷者へ応急手当てをおこない、すこしでも悲惨な結果を回避する必要があります。

■負傷者の救助と応急手当てが最優先
 交通事故は、交通量が多く、複雑な状況下で発生することが多いので、事故現場には予期せぬ危険がひそんでいます。このため、負傷者をすみやかに救助するとともに、救助者自身の安全を確保し、応急手当てを安全におこなえる場所を確保する必要があります。安全な場所としては、次のとおりです。
 1.道路外の空き地、広場、駐車場など車の通行がないか、少なく、救急車との連携が容易な場所
 2.交差点、坂道、カーブ、中央分離帯わきは避ける
 3.夜間は照明のある場所を選ぶ
 負傷者の移動については、可能なかぎり多くの人数でやさしく運びます。交通事故では頸椎(けいつい:くびの骨)や頸髄(けいずい:くびの脊髄)が損傷していることが多く、頭部や頸部がグラグラしないよう両手でしっかりと固定しながら移動させます。そして、意識の有無、呼吸や脈拍の有無をチェックし、必要な応急手当て(心肺蘇生法、止血法、意識がない場合の回復体位)を始めます。
■交通事故発生の通報
 負傷者をすみやかに病院へ搬送するためには、迅速な通報が大切です。冷静に事故状況を把握し、応急手当てをおこないつつ119番通報をします。119番通報では、質問に対し的確に答えるようにしましょう。
 1.火事か救急かをたずねられるので、「救急です」と答えます。
 2.事故の場所をたずねられるので、負傷者のいる場所を伝えます。現場の地理に不案内の場合は、電柱や公衆電話などに記載してある住所を伝えたり、付近の目印となる大きな建物などを伝えます。
 3.事故の状況をたずねられたら、簡潔に事故内容(「普通乗用車とワゴン車の正面衝突です」とか、「普通乗用車と歩行者の事故です」など)、事故状況(負傷者数、事故車両台数、車体損傷の程度、追突事故や燃料漏れ、積み荷散乱など2次災害の危険性)、負傷者の状況(「車内に閉じ込められて脱出不能」、「頭から血を流して意識がない」など)を伝えます。
 また、負傷者が重篤になりやすい事故としては、同乗者の死亡、車外放出、車両横転、車両が高度に破損・変形している、救出に20分以上要した、ライダー(後部座席を含む)とオートバイの距離が離れている、自動車と歩行者・自転車の衝突事故などがあげられます。これらの情報も、救急隊員にはたいへん参考になります。
 4.通報者(自分)の氏名を聞かれたら、フルネームで答えます。

■救急車到着時の対応
 救急車が近づいてきたら、可能なかぎり誘導、案内をおこないましょう。そして、救急隊員にわかる範囲で情報を伝えます。
 1.負傷者の容態…意識、呼吸、脈拍、出血、骨折など
 2.事故発生時の状況
 3.実施した応急手当ての内容
 4.その他の目撃情報

(執筆・監修:社会医療法人恵生会 黒須病院 内科 河野 正樹)