火災、爆発、テロへの対応 家庭の医学

 火災や爆発事故では、火炎や熱風によるやけど、一酸化炭素(CO)などの有毒ガスによる中毒、爆風で飛来してきた物による刺裂創(しれつそう)や打撲傷、骨折、内臓破裂に注意します。
 やけどをしたときは、まず安全な場所に移動し、水でぬらしたタオルをやけどに当て、病院で診察を受けます。火災や爆発事故でのやけどで恐ろしいのは、顔面熱傷や気道熱傷(空気が通る口腔〈こうくう〉、咽頭〈いんとう〉、喉頭〈こうとう〉、気管、気管支の熱傷)です。これらの熱傷は、受傷直後には症状がなく数時間してから著明な症状を示すことがよくあります。特に気道熱傷は、喉頭や気管・気管支壁がむくみ、呼吸ができなくなる可能性が高く、たいへん危険です。気道熱傷が疑われる場合はすみやかに病院で診てもらいましょう。

 テロにあったときは、いち早く安全な場所に移動し、自分や周囲の人々の傷害の程度を判断し、症状にあった応急手当てをおこないつつ救援隊をまちましょう。また、サリンなどによる化学テロや放射線被曝事故では、除染が重要になってきます。

□除染の分類
 除染の方法には次の3つがあります。
 1.粗除染:目で見てあきらかな汚染を除去すること。活性白土、粉せっけん、小麦粉などを汚染部分に散布し、布やウェットティッシュで拭き取ります。
 2.乾的除染:水を用いない除染であり、脱衣やヘラでの汚染物質除去のことです。脱衣の除染効果は高く、除染物質の80%は除染できます。
 3.水除染:脱衣後に水を使い除染するものであり、原因毒物によりせっけん水や塩素系除染水を用いることもあります。

□除染前のトリアージ
 除染前に、被災者のトリアージをおこなうことになっています。
 1.ただちに救命処置が必要か否か。
 2.除染が必要かどうか。
 3.除染必要群は、歩行可能か不可能かに区別し、歩行可能群は自分自身による除染をおこない、歩行不可能群は適切な防護をおこなったうえで除染テント内での除染をおこないます。

■災害派遣医療チーム(DMAT)
 2005(平成17)年からは、急性期災害医療を担当する「災害派遣医療チーム(disaster medical assistance team:DMAT)」の養成が始まり、東日本大震災で活躍したことは記憶に新しいと思います。
 DMATは災害急性期(おおむね48時間以内)に活動できる、域内で迅速に救命治療をおこなえる専門的訓練を受けた機動性を有する自己完結型の災害派遣医療チームのことです。自然災害のみならず、テロを含む人為災害でも頼りになる組織です。

■航空機内での事故への対応
 航空機内で急病になったり、事故が発生したときにどうするのがよいでしょうか。

□航空機内で急病になったとき
 まずは客室乗務員へ知らせ、指示を仰いでください。飛行中のドクターコールについては、筆者は過去に1回ですが、気胸を発生した乗客へ対応したことがあります。また、最近では全日空が「ANA Doctor on board」を進めており、筆者も登録しています。
※ANA Doctor on board:機内にて急に具合がわるくなった搭乗者に、客室乗務員が「ドクターコール」(アナウンスによる医療関係者の呼び出し)をせず、同制度に登録した医師に医療処置の協力依頼をする制度。他の航空会社にも同様の制度があります。

□航空機内で事故が発生したとき
 このときも客室乗務員の指示に従いましょう。そして、航空機客室内の気圧減圧に対処するため、上から酸素マスクが落ちてきます。航空機内の急激な減圧は、高度の低酸素状態をもたらし短時間に意識を失う可能性が高いので、ただちに酸素マスクを装着しましょう。もし、あなたが小さいお子さんを同伴されている場合は、子どもが独力で適切に酸素マスクを装着できる可能性は低いため、まずは親が装着し自分自身の安全を確保したのち、お子さんに酸素マスクを装着し救命をはかります。

(執筆・監修:社会医療法人恵生会 黒須病院 内科 河野 正樹)

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