尿の検査 家庭の医学

 尿は全身の代謝を反映して多くの代謝産物を含む検体であることから、腎臓や膀胱(ぼうこう)の異常にとどまらず、心臓、肝臓、代謝・ホルモンの病気を含めて、多くの病気の診断にきわめて有用な検査です。
 また、手軽な病気のスクリーニング検査として利用されています。通常は、pH、たんぱく、糖、ケトン体、ビリルビン、ウロビリノーゲン、潜血などが簡易に測定されます。尿中に排泄(はいせつ)される細胞成分や結晶などを集めて顕微鏡で観察することによって(尿沈渣〈ちんさ〉)、血尿や膀胱炎の有無、腎障害の程度や悪性腫瘍の有無なども調べることができます。
 さらに、尿中に排泄されている糖やたんぱくの量をより正確に測定したり、ナトリウムやカルシウム、ホルモンやその代謝産物の量を測定することで、病気の状態をよりくわしく調べることができます。たかが尿ですが、されど尿なのです。
 尿の検査は時間による変化を避けるために通常は採尿直後の新鮮尿を使うのが原則です。食事や運動の影響をできるだけなくすために食直後や運動直後は避けます。清涼飲料水や缶入りやペットボトルのお茶などにはビタミンCが多量に含まれているので尿糖や尿潜血の検査を陰性にすることがあります。ですので、検査前にこれらを飲まないようにします。
 検査値には、尿比重として反映されることもありますが、尿量や排尿回数にも注意をはらう必要があります。

●尿量の変化とその原因
多尿
(1日2L以上)
尿崩症糖尿病、腎不全多尿期など
乏尿
(1日400mL以下)
急性腎不全、脱水、急性心不全など
無尿
(尿量がゼロに近い)
腎不全、結石、腫瘍による尿路閉塞など
頻尿
(排尿回数が多い)
膀胱炎前立腺炎尿道炎、神経因性膀胱など


 また、尿のにおいなどから、糖尿病やまれな代謝異常が発見されることもあります。
 尿の色調も時には重大な疾患を予想させることにつながります(鮮紅色=血尿、コーヒー色=ミオグロビン尿など)。

(執筆・監修:国際医療福祉大学大学院 臨床医学 教授〔臨床検査医学〕 下澤 達雄)