離人症性障害〔りじんしょうせいしょうがい〕 家庭の医学

 離人とは、自分が見たり感じたりする実感が薄れる状態のことをいいます。具体的には、まず見たり聞いたりしているまわりの世界に対するいきいきとした実感が薄れる、たとえば景色がベールを通して見えるような感じがするということがあります。現実感喪失といいます。
 自分のからだの感覚が薄れることもあります。たとえば皮膚をさわっても実感が弱かったり、鏡で自分の顔を見ても日ごろと違うような感じがするといったようなことです。
 さらに、自分の精神世界に対する感覚が違ったように感じることもあります。自分が自分でないような感じ、喜怒哀楽の感情が薄くなった感じ、なにかやっても自分がやっているような気がしない感じ、などです。
 このような感覚は、ごく一時的であればだれもが体験しますし、また強い疲労があるときにもよく体験されるものです。こうした症状が単独に出現し、持続し、本人の不安が強い場合には離人症性障害の可能性があります。また、うつ病(気分障害)や統合失調症でも症状が出る場合があります。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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