不登校〔ふとうこう〕 家庭の医学

 からだの病気や経済的事情などがなく、心理的な要因で登校できない状態をいい、登校拒否、学校嫌いなどさまざまな呼びかたがされています。病名ではありません。怠学を不登校に含めるかどうかは議論があります。同じ児童で不登校と非行との両方がみられることがあり、厳密に分けるのは難しいケースもあります。
 幼稚園から大学まで児童・青年期のあらゆる年代でありますが、義務教育である小学校と中学校での不登校が重要です。2021年度の不登校児童生徒数は小・中学校を合わせて約24万5千人で、前年度より5万人近くふえ過去最高でした。年々の増加がいちじるしいですが、今回は特にコロナ禍の環境変化が影響しているとみられています。
 不登校の原因として、本人の性格的な問題、家庭的要因、学校側の要因などが指摘されてきました。傾向として、以前いわれていたような特殊な児童や特殊な家庭的背景に起こるという考えから、誰にでも起こりうる問題というように視点が変わってきました。
 症状としては、最初は、登校時間になると頭痛や腹痛をうったえ、まわりもからだの病気かもしれないと思わせられます。学校を休むとそのような症状はまもなく消え、一見元気になり翌日は登校すると明言したりします。そのような状態が続いて不登校が長びくと、しだいに不安や罪悪感(家族にわるいことをしているという思い)が生じます。そのような時期に登校をうながすと、逆に家族に反抗したり乱暴をしたりする家庭内暴力が生じることがあります。また、そのような葛藤を避けるようにひきこもりの状態になり、不登校が長期化することがあります。
 医療的なレベルで対応することは多くなく、教育関連の機関やスタッフが対応することが多いのです。またフリースクールなどの社会施設もしだいにふえ、学校が唯一の教育機関であるというイメージが変わりつつあります。
 精神科的に問題になるのは、当該生徒が神経症性障害、うつ病、統合失調症のような精神疾患にかかっており、不登校は症状の一つであると思われるときや、睡眠相後退症候群のような睡眠・覚醒(かくせい)スケジュール障害が原因となっているようなケースです。そのような場合は、適切な治療で不登校の問題の解決がはかられます。また児童精神科医や臨床心理士による、不登校児の心理状態や家族診断を受ければ、その後の対処がより適切になることが期待できます。

【参照】子どもの病気:不登校

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
医師を探す