非結核性抗酸菌症〔ひけっかくせいこうさんきんしょう〕 家庭の医学

 非結核性抗酸菌は水や土に広く生息する菌で、なんらかのきっかけで免疫力の低下した肺に感染し病巣をつくります。多数の菌種があり、この病気の原因となるのは80%がマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)で、10%がマイコバクテリウム・カンサシイ、残りは他の抗酸菌です。同じ抗酸菌に属する結核菌やらい菌と異なり、人から人への感染はありません。

[症状][診断]
 無症状で健診で見つかる人が多く、病気が進行すると慢性的なせき、膿(のう)状のたんが出るようになり、時に血たん、発熱などもみられます。胸部単純X線検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査で、気道に沿って散布性の粒状影や分枝状陰影、小結節影、空洞影、気管支拡張像、などがみられます。喀(かく)たんの培養検査で同一の抗酸菌が2回以上検出されれば原因菌とみなされます。たんが出ない場合には気管支鏡を用いて病巣から採取した物の培養検査をおこない、この場合には1回検出されれば病原菌とみなされます。

[治療]
 MACによる抗酸菌症は進行の早い場合と何年も変化をしない場合があります。何年も変化がない場合には、治療はおこなわず、定期的にX線やCTなどの画像検査で経過をみます。今のところ病原菌を完全になくす抗菌薬はなく、進行を阻止する目的で治療をおこないます。症状が軽い場合や炎症の範囲が狭い場合には、最初は菌の排出をうながすための去たん薬や、気管の炎症を抑える薬を使用して経過をみる場合があります。抗菌薬治療を開始するタイミングは、自覚症状が認められる場合や、X線やCTなどの画像検査で炎症の範囲が広い場合や空洞がある場合、または狭かった炎症の範囲が徐々にひろがってくる場合です。MACに対してはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの3剤併用療法が基本で、最低2年程度の治療継続をおこないます。その他の抗酸菌の場合は、菌の種類によって使用する抗菌薬が異なります。病変が肺の一部に限られている場合には外科的に切除しますが、その場合にも薬剤治療を併用します。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 講師〔呼吸器内科学〕 市川 昌子)
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