腎臓病の診断法 家庭の医学

 腎臓病は、自覚症状があらわれたときにはすでにかなり進行しています。したがって、健康診断などで早期に発見することが重要です。
 腎臓の検査として一般的なものは尿の検査(検尿)、血清クレアチニン、腎生検です。

■尿の検査
 尿の検査ではおもにたんぱく尿、糖尿、潜血反応の3つを調べることができます。このなかで、直接腎臓病と関連するものはたんぱく尿と潜血反応です。
□たんぱく尿
 たんぱく尿は、尿中のたんぱく質の量を検査するとわかります。腎臓(糸球体)では濾過(ろか)されないはずのたんぱく質が尿中にもれている場合、腎臓のはたらき(濾過機能)が正常でない疑いがもたれます。
 従来はたんぱく質の量を(-)、(±)、(+)、(2+)、(3+)と分けていましたが、現在では(-)、15、30、100、500(mg/dL)と分けています。このなかで、100と500(mg/dL)はあきらかに異常であるため再検査をおこなう必要があります。
□潜血反応・尿沈渣
 潜血反応は、尿へ赤血球が漏れ出ていないかをみる検査です。赤血球は本来、腎臓で濾過されないため、尿中に排泄(はいせつ)されませんが、検査で潜血反応があれば腎臓あるいは尿路の異常が疑われます。反応の強さを弱いほうから(-)、(±)、(+)、(2+)、(3+)と分類します。
 しかし、潜血反応は尿中に出ているヘモグロビン(赤血球の中に入っている色素)の反応をみているので、赤血球そのものが尿中に出ているかどうかの直接の確認にはなりません。そこで、赤血球が尿中に出ているかどうかを厳密に判断する場合は、尿沈渣(にょうちんさ)を調べることになります。尿沈渣とは、尿を試験管にとり、遠心分離器にかけて沈殿してたまった固形成分のことで、これを顕微鏡で調べて検査します。
 ただし、腎臓以外の尿路(尿管、膀胱〈ぼうこう〉、尿道)の病変で潜血反応や尿沈渣に赤血球がみられることがあり、これらの検査が陽性でも腎臓病だとは限りません。たんぱく尿が陰性のときには腎臓病以外の可能性もあります。しかし、潜血反応とたんぱく尿がともに陽性の場合には腎臓病と考えてください。
□24時間蓄尿(1日蓄尿)
 「1日蓄尿」という、1日の尿をすべて集める検査があります。腎臓病の診断や病気の進展の度合だけでなく、食事療法がしっかりとおこなわれているかどうかをみるときにもおこないます。
 起床後にまず排尿し、次回排尿から24時間の尿をすべて蓄えます。最初は実行するのがむずかしいかもしれませんが、何回かおこなっているうちに失敗なくできるようになります。平日、仕事や学校の関係で無理な場合は、土曜日から日曜日にかけて、あるいは、日曜日から月曜日にかけておこないます。
 この尿を用いて一般的には、尿量、たんぱく、糖、クレアチニン、尿素窒素、ナトリウムが測定されます。
 以前は蓄尿したすべての尿をポリ容器に入れてもってくる方法が多くおこなわれていましたが、最近では蓄尿した尿量を測定し、その一部20mL前後を別の容器に入れて提出する方法に変わりつつあります。後者の場合、正確に尿量を測定してください。またいずれの場合も、蓄尿や尿量測定を忘れたのが1回くらいであれば尿のクレアチニン排泄(はいせつ)量により全体量を推定できますので、中止しないでください。
 最近では1日蓄尿するのではなく、随時尿でも尿中のクレアチニン濃度とたんぱく濃度を同時に測定することで大体のめやすがつけられます。たとえば、採取した尿のクレアチニン濃度が10mg/dLでたんぱく濃度が1mg/dLである場合、1日のクレアチニン排泄量がほぼ1000mgとされているので、(1000mg)?(1mg/dL/10mg/dL)で1日あたり100mgのたんぱく尿とおおまかですが、推察することができます。
 尿の中に出てくる糖はぶどう糖です。ぶどう糖は通常、血液中から糸球体で濾過されますが、正常ならほぼ100%再吸収され体内に戻ります。血液中のぶどう糖濃度が必要以上に高い(高血糖)と、再吸収が追いつかず尿中にぶどう糖が出てきます。これが尿糖です。
 ナトリウムは、1日の食塩摂取量の推定に用います。
 尿素窒素はたんぱく質の摂取量を推定するめやすとなります。

■血清クレアチニン
□血清クレアチニン値
 腎臓の機能は、一般には血清クレアチニン値を用いて評価します。クレアチニンは筋肉の構成要素が分解されて血中に流れ出たもので、腎臓経由でしか体外に排出されません。腎機能が正常であれば常に一定の値が保たれますが、腎機能が低下して糸球体の濾過機能が落ちてくると血中に残るクレアチニンがふえ、血中のクレアチニン濃度が上昇します。血清クレアチニン値は、この血中のクレアチニン濃度の指標です。血清クレアチニン値が男性で0.6~1.2mg/dL、女性で0.4~1.0mg/dLならば、一般に腎機能は正常範囲とされています。
□クレアチニン・クリアランス
 血清クレアチニン値は各人の体重、年齢、性別によって大きなばらつきがあります。そこで、腎臓の機能を正確に評価したい場合には、クレアチニン・クリアランスを用います。
「血中のクレアチニンのどの程度が腎臓から尿中に排出されたか」をみる指標で、「一定時間内に尿中に排泄(はいせつ)されたクレアチニンの量/血清クレアチニン値」の値を用います。2時間分の尿を用いる場合と24時間の尿を用いる場合があります。

●クレアチニン・クリアランス(CCr)の推算式
(Cockcroft-Gaultの式)
【男性】CCr={(140-年齢)×体重}÷(72×血清クレアチニン値)

【女性】CCr=0.85×{(140-年齢)×体重}÷(72×血清クレアチニン値)


■腎生検
 腎生検は検尿とともに、腎臓病の診断には欠かせない検査です。腎臓の一部を採取し、検査室でさまざまな方法で検討し、最終的に腎臓の病気の診断をつけます。腎臓専門医のいるところではどこでもおこなわれています。ただし、腎臓病の患者すべてにおこなうわけではありません。各病院により異なりますが、尿潜血反応の結果にかかわらずたんぱく尿が100mg/dL以上ならば、腎生検をおこなうことが多いと思われます。
 腎生検には2種類の方法があります。直接に腎臓を露出して腎臓の組織を取り出す「開放腎生検」と、からだの表面から針(生検針)を腎臓まで挿入し腎臓の組織を取り出してくる「経皮腎生検」です。
 一般におこなわれているのは経皮腎生検です。腎臓の位置と生検針の先を超音波(エコー)を用いて確認しながら、生検針で腎臓のごく一部(およそ5万分の1程度)を取り出します。生検針を挿入するときには局所に麻酔をおこなうので、痛みを伴うことはありません。生検針が腎臓内に入っている時間は0.1~0.2秒前後とされています。
 一般には腎生検をおこなったあと少量の出血がありますが、からだの表面より圧迫して止血をおこないます。生検が終了したあとは、少なくとも6時間は腎臓の部分を外から圧迫するようにして、仰向けで休んでください。また、腎生検後、血尿が出ることもありますが、大量でなければ心配はいりません。
 一般的に、6時間以内に激しい痛み、血圧の低下、肉眼的血尿といった顕著な症状がなければ、通常の安静にて次の6時間を過ごします。12時間後に超音波で腎臓を観察し、特に異常がなければ通常の活動は可能となります。しかし、数日間は過激な運動は避けたほうがよいです。

■腎臓の画像診断
 腎臓病の診断には腹部のX線検査、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像法)検査などが用いられます。

【参照】画像診断法

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
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