胸郭出口症候群〔きょうかくでぐちしょうこうぐん〕 家庭の医学

 鎖骨の上のへこみから第一肋骨と鎖骨、鎖骨の下の肩に近いところにある小胸筋までのすきまを胸郭出口といい、上肢(腕)に分布する神経や血管が走行しています。この部分での神経や血管の圧迫、牽引(けんいん)によって、上肢のしびれ、だるさ、痛みなどの症状がひき起こされる病気と考えられています。20~30歳くらいの女性に多く、頸椎捻挫(けいついねんざ)や肩周囲の外傷などでも発症することがあります。
 他覚的な神経症状はあきらかでない場合が多く(自覚症状のみ)、発汗異常やめまい、吐き気などの自律神経症状が存在することもあります。鎖骨の上のへこみにある斜角筋部に圧痛(押すと痛い)と放散痛(直接の患部でない部分が痛む)をみとめます(モレイテスト)。頸椎をやや伸展(背中側へたおす)し、反対側に回旋(顔を向ける)して息を深く吸ってとめる(アドソンテスト)、両腕を真横に開き、手を上方向に前腕(ひじよりさき)が地面と垂直になるように、ひじを直角に曲げた位置をとる(ライトテスト)などの脈管テストで橈骨(とうこつ)動脈の拍動が停止することや、ライトテストの姿勢で3分間、指をにぎったり開いたりするルースの3分間試験などで症状の出現をみて診断します。
 また、神経原性胸郭出口症候群と呼ばれる、手の筋肉に明らかな萎縮が出るような場合もありますが、非常にまれです。
 治療は温熱療法や体操療法、薬物療法、神経節ブロックなどを組み合わせておこないます。手術は日常生活や就業に支障がある場合におこないますが、牽引によって症状が出ている場合には効果がないと考えられています。圧迫をとる目的で第一肋骨切除が一般的におこなわれます。同じような症状は動揺性肩関節(肩関節がゆるく、亜脱臼〈あだっきゅう〉しやすい状態)でも生じます。

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