コレラ〔これら〕 家庭の医学

 コレラ菌(Vibrio cholera O1およびO139のうちコレラ毒素産生性の菌)によってひき起こされる激しい下痢症で、米のとぎ汁に似た白色の水様便が大量に出るのが特徴です。下痢とともに大量の水分が失われ脱水状態になり、血圧が低下します。また、体内のカリウムも失われるため、けいれんが生じることもあります。
 日本では毎年50~100人程度発病していましたが、多くは海外からのもち込みであり、最近では減少傾向です。これまでに和歌山(1977年)、東京(1978年)、名古屋(1989年)、千葉(1991年)などで小流行がありました。1995年にはバリ島旅行者から多発し、この年は350人を超えました。世界全体では1991年に急増し、60万人に達しましたが、そのあとは、以前の10万~20万人程度のレベルに戻りつつあります。
 流行地は熱帯、亜熱帯地方の国で、インド、インドネシア、バングラデシュ、南米ペルーなどです。古くからあるO1血清型に加え、最近はO139血清型がふえています(新型コレラ)。感染経路は経口感染で、水や食物を介して感染します。したがって、流行地では加熱処理が大切です。流行地へ出かけたときはミネラルウオーターを飲むか、電気ポットで加熱した水を飲むのが安全でしょう。潜伏期は半日~5日です。
 コレラによる下痢は菌が産生するコレラ毒素によるもので、下痢の量は1日10~30Lになりますが、それにみあった水分や電解質を補うことによって救命できます。キノロン系薬などの抗菌薬が有効です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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