日本脳炎〔にほんのうえん〕 家庭の医学

 日本脳炎ウイルスの感染による急性脳炎です。ブタが増幅動物(ウイルスをふやす役割をもつ動物)となり、コガタアカイエカなどの蚊が媒介します。
 日本脳炎は極東から東南アジア・南アジアにかけて広く分布しています。国内での流行は、日本脳炎ワクチンの定期接種や蚊の駆除によりほとんどみられなくなり、1992年以降の発生数は毎年10人以下程度となっていますが、国内でのブタの日本脳炎ウイルスまん延状況調査では、毎夏日本脳炎ウイルスをもった蚊は発生しており、国内でも感染の機会はなくなっていません。
 感染したにもかかわらず感染症状が出てこない不顕性感染が多いといわれていますが、発症者は、感染後1~2週間の潜伏期を経て、急激な発熱と頭痛をおもな症状として発症し、その後、症状は悪化して、意識障害、筋硬直、神経まひ、不随意運動などの脳炎症状が出現します。
 発症した場合の致死率は約25%、患者の50%は後遺症を残すことから、ワクチンによる予防がもっとも重要となります。小児期に実施されている定期接種を必ず受けるようにしてください。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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