乳がんの再建 家庭の医学

 最近は、乳房(にゅうぼう)の切除範囲を少なくする方法(乳房温存療法)がふえていますが、切除の量が大きいと乳房の変形が残ります。女性にとっては「がんになった」というショックだけでなく、女性のシンボルともいえる乳房のかたちが損なわれることは精神的に大きな重荷となります。

【治療】
 これまで、乳房の再建には自家組織(自分の組織)を移植する方法が一般的でした。腹部の皮膚・皮下脂肪を移植する腹直筋(ふくちょくきん)皮弁や、背中の組織を用いる広背筋(こうはいきん)皮弁が代表的な術式です。

 2013年にシリコン製インプラントによる乳房再建術が保険適用となり、近年ではインプラントを用いる手術が多くの施設で主流となっています。2019年に、一部のインプラント製品に関連するまれな合併症として、悪性腫瘍(乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)の危険性が指摘されました。現在は、悪性腫瘍の危険性が少ないインプラントが認可され、使用されています。
 再建をおこなう時期には、乳房切除と同時におこなう1次再建と、切除後しばらく期間をおいてからおこなう2次再建とがあります。

【参照】女性の病気:乳がん

(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)
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