車椅子 家庭の医学

 車椅子は歩く代わりに利用する、歩けないか歩行の困難な人のためのものです。自分でこぐかこがないかによって、車椅子の構造は異なります。

 また、訓練として歩行をするとしても、実用生活のためには、車椅子を使用するほうが適当な場合もあります。移動手段としては、歩行による移動とは、別に考えることができます。
 車椅子には、標準タイプのほかにもいろいろあり、背もたれが高く、うしろに倒せるタイプ(リクライニング式)、背もたれと座面が傾き、全体的に横になるタイプ(ティルト式)、スポーツ用に軽量なタイプ、前の車輪が大きいタイプ、電動車椅子などがあります。 
 また、ブレーキのタイプ、ひじ掛けのタイプ、足台のタイプ、ハンドルのタイプ、シートの高さ、自在輪(キャスター)の大きさなど、各部分は利用する場所や、目的により決める必要があります。
 最近は、バリアフリーの施設や、公共交通機関がふえてきていますが、まだ十分とはいえず、車椅子の利用は、どこでも可能というわけでもありません。また、移動時だけでなく、ベッド、ふつうの椅子、トイレの便座などとの乗り移りの動作のためには、十分に練習しておく必要があります。乗り移りするときに、ブレーキを忘れないなど、安全に十分注意を払う必要もあります。そのほか、屋外では、横断歩道などで段差があり、自分で越えられないこともあります。そうしたときには、人に手助けしてもらいます。

(執筆・監修:帝京大学医学部リハビリテーション医学講座 准教授 中原 康雄)