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AI搭載型モバイルアプリを活用し、糖尿病の診療の質の向上を目指す 岐阜大学

 岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学(教授:矢部 大介、以下「岐阜大学」)は、H2株式会社(本社:東京都台東区、社長:エド・デン、以下「H2」)と「インスリン/GLP-1受容体作動薬で治療中の2型糖尿病患者を対象としたモバイルヘルス介入効果に関するコホート研究」に関して、共同研究を開始します。

 【本研究のポイント】

 ・糖尿病の治療において、医療従事者が患者さんの食事運動など日常生活の状況を把握したうえで、適切なアドバイスを提供することが重要です。このような背景から、IoT技術を活用して食事運動の実施状況や血糖値の変化を簡便に収集し、医療従事者や患者が直感的に把握できるアプリを用いたモバイルヘルスが世界的に注目されています。

 ・本研究では、糖尿病患者さんがモバイルヘルスを用いて血糖値や体重、食事運動の記録をとり、診察時に医師と共有することが、医師・患者間のコミュニケーションを効率化し、血糖値や体重のコントロールを改善するかを検討します。また、糖尿病患者さんの生活の質(QOL)やセルフケア行動に与える影響を検討します。

 ・本研究に参加いただくすべての糖尿病患者さんは、体重計と血圧計を貸与され、無作為に介入群もしくは従来群に割り付けられます。介入群の患者さんは、モバイルアプリ「シンクヘルス」(以下、シンクヘルス)を使用し、血糖値や体重、血圧食事運動の記録をアプリに登録します。血糖値や体重、血圧は、シンクヘルスのデータ転送機能により自動登録されます。従来群の患者さんは、研究期間中、シンクヘルスを用いません。

 ・医師や看護師、管理栄養士などの医療従事者は、診察時にアプリとクラウド連携している閲覧画面「シンクヘルスプラットフォーム」(以下、シンクヘルスプラットフォーム)を用いて、介入群の患者さんのグラフ化された血糖値や体重などの記録を確認し、必要なアドバイスを行います。従来群の患者さんでは、シンクヘルスプラットフォームは用いません。

 【研究の背景】

 糖尿病の治療において、医療従事者が患者さんの食事運動など日常生活の状況を把握したうえで、適切なアドバイスを提供することが重要です。しかし、限られた診察時間のなかで、患者さんの日々の食事運動の実施状況や血糖値の変化を医療従事者が把握して、適切なアドバイスを行うことは必ずしも容易ではありません。このような課題の解決の一助として、近年、IoT(Internet of Things)を活用して血糖値や体重、血圧などの情報を自動記録すると共に、食事運動の実施状況や服薬・注射状況を記録し、診察時に医師や看護師、管理栄養士などの医療従事者と共有するツールとしてモバイルヘルスが注目されています。医療従事者と患者のコミュニケーションを良好化し、血糖値や体重のコントロール、さらには糖尿病患者さんの生活の質(QOL)を改善しうるツールとして世界的に期待される一方、わが国の糖尿病診療における効果や位置づけについては明確ではありません。このような背景から、岐阜大学では、モバイルヘルスが糖尿病の診療に与える影響を検証するため、「インスリン/GLP-1受容体作動薬で治療中の2型糖尿病患者を対象としたモバイルヘルス介入効果に関するコホート研究」を実施します。

 【研究の概要】

 本研究は、インスリンもしくはGLP-1受容体作動薬で治療中の2型糖尿病患者さん(20歳から75歳、スマートフォンの利用が可能な方)を対象として、糖尿病診療におけるモバイルヘルス使用の効果や課題を調査することを目的としています。岐阜大学医学部附属病院 糖尿病代謝内科/免疫・内分泌内科、岐阜市民病院 糖尿病・内分泌内科、岐阜県総合医療センター 糖尿病・内分泌内科、松波総合病院 糖尿病・内分泌内科のいずれかに通院し、本研究の趣旨を理解し、参加に同意が得られ、かつ種々の参加条件を満たす2型糖尿病患者180人をリクルートし、介入群と従来群にランダムに割り付けます。

 介入群の患者さんは、モバイルアプリ「シンクヘルス」を使用し、血糖値や体重、血圧食事運動の記録をアプリに登録します。血糖値や体重、血圧は、シンクヘルスのデータ転送機能により自動登録されます。従来群の患者さんは、研究期間中、シンクヘルスを用いません。なお、全ての患者さんが観察期間中、体重計、血圧計の貸与を受けます。

 医師や看護師、管理栄養士などの医療従事者は、診察時にアプリとクラウド連携している閲覧画面「シンクヘルスプラットフォーム」を用いて、介入群の患者さんのグラフ化された血糖値や体重などの記録を確認し、必要なアドバイスを行います。従来群の患者さんでは、シンクヘルスプラットフォームは用いません。

 介入群、従来群の患者さんを6カ月間観察し、6カ月間のHbA1cの変化量を主要評価項目として比較します。さらに体重、セルフケア行動評価尺度(SDSCA)、食事摂取頻度調査(FFQ)、自己注射アドヒアランス、糖尿病治療関連QOL(DTR-QOL)、低血糖頻度、アプリ継続率、医師・管理栄養士の業務効率(診察・指導時間を含む)についても副次評価項目として比較します。

 【期待される効果】

 本研究を通して、わが国の糖尿病の診療におけるモバイルヘルスの有効性や課題を明らかにし、実臨床でのモバイルヘルス活用時の留意点を明確化することができると期待しています。また、専門医不足が深刻な問題となっている岐阜県において、糖尿病患者さんに対して、かかりつけ医と専門医がモバイルヘルスを用いて患者さんのデータを共有することで、質の高い診療を提供することができる可能性も将来的には期待できます。さらに、新型コロナウイルス感染症に代表される新興感染症により医療機関に来院できない場合の一時措置的なオンライン診療においても、患者さんの状態を把握してより質の高い医療を提供できる可能性があります。

 シンクヘルスアプリの概要                        

 日々の血糖値や体重、血圧などの計測データや食事運動の状況を入力する。入力したデータは、わかりやすくグラフ表示されます。Bluetooth機能を搭載する血圧計や体重計、自己血糖測定器などの機器を使用すれば計測データを自動的に記録することができます。また、本アプリは、AIを搭載しており、患者さんが記録する各種データにもとづいて、定期的にメッセージを配信することで、糖尿病の自己管理に向けたモチベーション向上がはかれると期待されています。国内では23万人、世界では78万人(2021年12月現在)のユーザー登録実績があります。

 シンクヘルスプラットフォームの概要

 医師や看護師、管理栄養士などの医療従事者は、診察時にアプリとクラウド連携しているシンクヘルスプラットフォームを用いて、患者さんが入力した血糖値や体重、血圧、歩数などのデータ、服薬・注射状況、食事の写真を確認し、診療に活かすことができます。

 【H2株式会社の会社概要】

 『医療場面においてITを駆使し、一人一人がより健康でいられる世界の実現』のもと、2013年6月に台湾で創業、2018年2月より日本に本格進出し、マレーシア、シンガポール、フィリピンにもビジネスを展開しています。

 主には健康生活サポートアプリ(シンクヘルス )と、そのアプリにあるデータを診療に活用できる、クラウドサービス(シンクヘルス プラットフォーム)を展開しています。さらに2019年12月より、SOMPOひまわり生命保険株式会社とともに、当社のアプリと連携した糖尿病患者向け保険を提供スタートしました。

所在地:東京都台東区上野3-2-2 アイオス秋葉原604号室
TEL:03-6284-2292
URL:https://www.health2sync.com/ja

株主:SOMPOホールディングスなど
主要取引先:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社、SOMPOひまわり生命保険株式会社など

 <主なメディア掲載歴>

日本経済新聞:台湾発、糖尿病管理アプリにビデオ通話機能
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ23BH60T21C20A2000000/



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