治療・予防

背中などに赤い発疹
~すぐに広まる「とびひ」~

 かゆいと思ったら枯れ野に火が広がるように、あっという間に背中全体に赤い発疹が広まり、すぐに化膿(かのう)してしまう。これが、プールや水遊びを楽しむ機会が多い夏場の子どもに付き物の「とびひ」(伝染性膿痂疹=でんせんせいのうかしん)だ。皮膚の虫刺されや小さな引っかき傷に、皮膚常在菌の黄色ブドウ球菌などが感染・繁殖して起きる感染症で、あせもなどと誤認してほっておくと体のあちこちに広がってしまう。早期に皮膚科を受診して治療を受けよう。

暑さの中、水遊びを楽しむ子供たち=東京都内=

暑さの中、水遊びを楽しむ子供たち=東京都内=

 ◇引っかき傷、虫刺されと誤認

 長年、東京都中野区内の皮膚科クリニックで診療を続けてきた楠俊雄医師はとびひについて、次のように説明する。

 皮膚を清潔に保てばある程度予防はできる。しかし、汗を多くかき、皮膚が敏感な乳幼児では、その効果に限界がある。また、初期のとびひを引っかき傷や虫刺されと誤認し、ばんそうこうなどで患部を覆ってしまうと、密閉された患部が高温多湿になって細菌を増殖させてしまい、逆効果になる。患部を1日2回はせっけんで洗う一方、うみなどが出てしまうときは通気性の高いガーゼでカバーするようにしたい。

 ◇増加する耐性菌

 楠医師によれば、治療は塗り薬(軟こう)の抗菌薬が中心となり、かゆみ止めの抗ヒスタミン剤などを組み合わせて使う。ただ、症状が重い場合や患部が広まっている場合は飲み薬(内服薬)の抗菌剤を併用することが多く、治療期間は5~7日だ。「ただし、最近は通常の抗菌薬が効かないMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの耐性菌が増えている。患者一人ひとりに対し、抗菌薬が有効かどうか感受性テストの結果を見ながら治療を進めていく必要がある」と言う。

 最近は耐性菌が増加して、治療の支障となる事例が増えている。このため投与した抗菌薬が適切に治療効果を上げているか確認することもあって、楠医師は「最低でも2回は医師の診察を受けるようにしてほしい」と強調。とびひに罹患(りかん)したら、プールは避けてほしいと呼び掛けている。

 発熱伴う「痂皮性膿痂疹」

 もう一つ、楠医師が重要視するのが、痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)と区別することだ。外見的症状も似ている。しかし、熱が出て、季節的な偏りもない点が異なる。原因となるのは溶血性連鎖球菌で、かさぶたになることが多い。通常のとびひとは異なる種類の細菌による皮膚感染症だが、治療自体は原因となる細菌が異なることから、この細菌に効く、異なる抗菌薬を使う必要がある。このため、症状や季節などの外部要因も考慮しての診断が重要になる。

 「子どものとびひが親に感染したと決め込み、とびひを想定した抗菌薬を出しても治療効果が上がらない、などということも起こり得る。丁寧な問診や経過観察が必要だ」

 治療と並行して、皮膚を清潔に保ち、保湿を心掛けるなどのスキンケアも重要な予防策になることも覚えておこう。(喜多壮太郎)

【関連記事】


新着トピックス