AGAは発症したら終わりじゃない!AGA発症の原因と年齢の関係を解説

AGAは発症したら終わりじゃない!原因と年齢の関係を解説

2023年10月18日

金 仁星(キム インソン)医師

監修医師 金 仁星(キム インソン)

  • hp
大阪大学医学部卒業後、地元の病院で臨床研修を修了。 その後、医療法人 友広会の理事に就任、同法人のAGAメディカルクリニックで勤務。

AGA(男性型脱毛症)は、ホルモンや遺伝的要因によって引き起こされる脱毛症の一種です。

AGAには有効な対処法が無いと考えられがちですが、必ずしもそうではありません。AGAには様々な治療法や対処法があり、適切な治療を行えば改善できる可能性があると言われています。

目次

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AGAが発症したら終わりといわれる理由

AGAが発症したら終わりと言われる原因

「AGAが発症したら終わり」といわれる理由にはAGAの病態や治療法が関係しています。

ここでは発症したら終わりといわれる理由を解説します。

AGAは1度発症したら完治することは無いから

一度発症したAGAは完全に治癒することはありません。

AGAは主に男性ホルモンの影響によって引き起こされる脱毛症です。生え代わりの期間(ヘアサイクル)が変化し、徐々に毛髪が細く短くなります。

現代の医療では変化したヘアサイクルを元に戻すことはできないため、治療によって得られる効果は薄毛の進行防止や発毛促進であり、完治することはありません。

治療をやめるとまたAGAが進行するから

AGAは進行性の脱毛症であり、治療をやめると再び症状が進行します。

適切な治療を行った場合、一時的に進行を遅らせたり発毛を促進させたりすることができますが、治療を中断するとAGAに関係する男性ホルモンなどの因子が再び働き、脱毛が進行します。

少なくとも 6カ月程度は内服を継続し効果を確認すべきである.なお,内服を中止すると効果は消失する.

眞鍋求, et al. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版. 日本皮膚科学会雑誌, 2017, 127.13: 2763-2777.

治療を続ける限りずっと治療費がかかり続けるから

AGAの治療は効果を感じられるまで、最低でも6ヵ月程度は治療を継続する必要があると言われています。

AGAモデル動物であるベニガオザルにフィナステリド(1 mg/kg/day)を6ヵ月間経口投与したところ,毛髪重量と毛包の長さは増加し,ヘアサイクルにおける成長期の毛包が増加した

福住仁, et al. 男性における男性型脱毛症用薬 5α-還元酵素 II 型阻害薬フィナステリド (プロペシア® 錠 0.2 mg・1 mg) の薬理学的特性と臨床効果. 日本薬理学雑誌, 2006, 127.6: 495-502.

また、治療の効果が得られていたとしても、治療を中止すると効果もなくなってしまうと考えられています。

治療を行うことで症状を抑える可能性が高まりますが、その効果を維持するためには定期的な投薬や治療が必要で、その期間は治療費がかかり続けることになります。

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【AGAが発症する前に】AGAになる原因を知ろう

AGAの5つの原因

AGAが発症するきっかけは主にホルモンバランスの変化と遺伝的要因です。その他には加齢や生活習慣が挙げられます。

ここではAGAになる原因を詳しく説明します。

男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)の影響

DHT(ジヒドロテストステロン)は、男性ホルモンの一種であり、AGAの主な原因の一つです。

テストステロンと呼ばれる男性ホルモンが、5αリダクターゼと呼ばれる酵素に結合するとDHT(ジヒドロテストステロン)に変換されます。DHT(ジヒドロテストステロン)は毛包内の男性ホルモンを感知する受容体(男性ホルモンレセプター)に結合します。

するとTGFβとよばれる因子が毛包内で分泌され、髪が抜けるように指示を出します。このために毛髪が成長する前に抜け落ちてしまいヘアサイクルが変化してしまいます。

AGA は遺伝的背景および男性ホルモンによって主に男性に生ずる.男性ホルモンは,筋肉や骨を発達させ,髭や体毛を濃くするが,頭頂部や前頭部においては男性ホルモン感受性毛包が局在し,男性ホルモンの影響によって,直径 40μm 以下の軟毛(うぶ毛)化を呈する.特に testosterone(TES)の活性体であるdihydrotestosterone(DHT)が男性型脱毛症の発症に大きく関与している.

山田久陽; 池田明子. 男性型脱毛症治療薬の研究動向. 日本薬理学雑誌, 2009, 133.2: 73-77.

治療としてはDHTの影響を抑制する方法が考えられます。

内服薬として使用されるフィナステリドという薬物は、5αリダクターゼという酵素を阻害することでDHTの生成を減少させる働きがあります。また、ミノキシジルは外用薬として使用されており毛髪の成長を促進する効果があります。

これらの薬物は同時に副作用も生じるため、クリニックで処方されたものを使用することが大切です。

遺伝的要因・家系からの影響

AGAは非常に遺伝しやすい病気として知られています。

AGAはDHT(ジヒドロテストステロン)と男性ホルモンレセプターの感受性の高さが関係しています。体内におけるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成が高い人や男性ホルモンレセプターの感受性が高い人はAGAになりやすくなります。

この2つは遺伝によって決定されていることが知られているため、AGAは高い確率で遺伝します。家族に薄毛の人がいる場合、薄毛になる確率が高くなるのはこのためです。

男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与するが, 遺伝的背景としては X 染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や常染色体の 17q21 や 20p11 に疾患関連遺伝子の存在が知られている

眞鍋求, et al. 男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版. 日本皮膚科学会雑誌, 2017, 127.13: 2763-2777.

環境要因・生活習慣の乱れによる影響

AGAは生活習慣の乱れによっても生じることが知られています。

ストレスや睡眠不足、栄養不足によってホルモンバランスの乱れが生じ、毛包のヘアサイクルに影響を及ぼすためです。その結果、ホルモンバランスの乱れによって毛髪の成長が遅くなったり、脱毛が進行します。

また、喫煙も毛髪の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。喫煙によって血液循環が悪化し、毛包への栄養供給が減少するためです。健康的な生活習慣を維持することは、AGAの進行を遅らせたり、健康な毛髪を維持する上で重要です。

過度のヘアケア・頭皮の炎症による影響

過度のヘアケアや頭皮の炎症はAGAの進行を早める可能性があります。

過度な負担や炎症は毛包に悪影響を与えるためです。過度なブラッシング、コームの使用は、毛包にストレスをかける代表例です。

また、過度なヘアスタイリングやカラーリング、パーマなどの化学処理や、高温のヘアドライヤーやカーラーによる熱は、髪の毛と頭皮に負担をかけるため好ましくはありません。

その他には 頭皮の炎症が挙げられます。炎症によって毛包が傷つけられ、正常なヘアサイクルを妨げると言われています。

頭皮トラブルに伴い炎症性因子が亢進し,毛髪形成が遺伝子レベルで阻害されて新たに作られる毛髪のハリ・コシなどが低下することが示唆され,また,それを防ぐ植物由来成分の可能性を提示した。

江浜律子, et al. 頭皮トラブルが毛髪物性に及ぼす影響と植物由来エキスによるその予防. 日本化粧品技術者会誌, 2018, 52.1: 16-23.

ストレスによる血流悪化による影響

ストレスによる血流の悪化は、AGAの進行に影響を及ぼします。

ストレスは体内のホルモンバランスや血流を変化させ、毛髪に影響を及ぼすためです。ストレスを感じると副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールを分泌します。

過剰なコルチゾール分泌はホルモンバランスを乱し、毛髪に影響を及ぼします。

また、ストレスは交感神経を刺激し、血管を収縮させる影響を持ちます。これによって、頭皮の血管が狭くなり、髪の毛への酸素や栄養供給が減少します。

毛包には適切な酸素や栄養が必要であり、血流が妨げられると毛髪が影響を受けることがあります。

脱毛や薄毛の原因は、これまで遺伝的素因 やホルモンバランスの乱れなどによるものとされてきたが、特に近年は、環境からのストレ スに加えて精神的なストレスとの関係について研究が行われている。

嵯峨山和美. Inonotus obliquus (Chaga) 由来の発毛・育毛活性成分に関する研究. (No Title), 2019.

AGAは年齢を問わず発症する!年代別発症率と特徴を紹介

年齢ごとのAGA発症率と特徴

AGAは基本的に男性にしか見られない疾患で、成人以降であれば年齢を問わず進行する脱毛症です。

ここでは年代別の発症率と特徴を紹介します。

AGAは年齢を問わない進行性の脱毛症

AGAは、成人以降であれば年齢を問わず進行する脱毛症です。

男性ホルモンであるテストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、DHTが感受性の高い毛包に影響を及ぼすことで、髪の毛が細くなり、薄毛が進行していきます。

どの世代も早期治療が進行を抑えるのに効果的

どの病気も早期発見・早期治療が大切ですが、AGAも例外ではありません。その理由としては毛母細胞の寿命が関係しています。

毛母細胞はヘアサイクルの回数の限界があり、限界を迎えると発毛させることが出来なくなります。

AGAの毛母細胞はヘアサイクルの異常が生じているため、通常の毛母細胞よりもヘアサイクルが異常に早くまわり、限界に達してしまった毛母細胞の割合が増加します。

現在の治療ではヘアサイクルが終わった細胞を再生させることは出来ないため、出来る限り早い段階で治療を開始することが重要です。

10~20代:発症率約10% <髪質に変化がでてくる>

若い年代でもAGAが発症することがありますが、比較的少ない割合です。この時期に発症する場合、家族歴や遺伝的要因が強く影響している可能性が高いです。

髪の毛の量や質に変化が現れ、頭頂部や前頭部の髪の毛が薄くなることが特徴です。

30代:発症率20% <毛量にも変化がでてくる>

AGAの症状が進む年代です。

男性の場合、特に前髪から頭頂部にかけての部分が薄くなり、M字型の脱毛パターンが形成されることが多いです。

女性の脱毛症(FAGA)の場合は髪の毛が細くなり、ボリュームの減少が目立ちます。

40代:発症率30% <薄毛の進行が目立ってくる>

 AGAの症状が進んだ状態になります。

男性では前髪や頭頂部の脱毛が進行し、地肌が目立つようになることがあります。

FAGAの場合でも更年期に関連して発症することがあり、全体的な髪のボリュームが減少することがあります。

50代以降:発症率40% <進行がすすみ脱毛症状が目立ってくる>

50代以降では発症率が40%にもなり、3人に1人は発症していることになります。

症状としてはAGAの進行が進み、全体的に薄毛や脱毛症状が目立つようになります。

50代以降では治療するには遅いと考えてしまいがちですが、人によってAGAの進行度は変わるため、積極的に治療を行うことが大切です。

AGAの進行を抑えるための日常生活のケア5選

AGAの進行を遅らせるケア方法

AGAの進行を抑えるためには、日常生活のケアが重要です。

ここではAGAの進行を抑えるための日常生活のケアをいくつかご紹介します。

①バランスの良い食事をとる

栄養バランスの取れた食事を摂ることは、髪の健康に重要です。

亜鉛、ビタミンD、鉄、ビオチン、タンパク質などが健康な髪の成長に必要な栄養素であるため、新鮮な野菜や果物、健康的な脂質、たんぱく質を含む食品を摂るよう心がけましょう。

②十分な睡眠をとる

十分な睡眠を確保することは、ホルモンバランスや身体の回復に重要です。

睡眠不足はAGAの進行に影響を及ぼす可能性があるため、質の良い睡眠を心がけましょう。

③ストレスの解消<趣味や運動習慣>

ストレスはAGAの進行を促進する可能性があるため、ストレス管理が大切です。

趣味を充実させたり、運動する習慣を身に着けることで、ストレスを軽減しましょう。

④頭皮のマッサージ・保湿

AGAの進行を抑えるには、頭皮のマッサージと保湿が重要です。頭皮マッサージは血行を改善し、髪の栄養供給を促進します。

保湿は頭皮の健康を保ち、髪の成長を促進させます。

⑤過度なアルコールやタバコの制限

過度なアルコール摂取やタバコの喫煙は、血流を悪化させ、毛根への栄養供給を減少させる可能性があります。

これにより髪の成長が妨げられ、脱毛が促進される可能性があります。

健康な生活習慣の維持は、髪の健康維持にも関わる重要な要素です。

AGAに関するよくある質問

AGAは自然に治る病気ですか?

AGAは自然に治る病気ではありません。

AGAは遺伝的要因と男性ホルモンの影響によって引き起こされる脱毛症であり、一度発症すると自然に治癒することはほとんどありません。治療を行わない場合、症状は進行し続けてしまいます。

ただし、適切な治療やケアを行うことで、AGAの進行を遅らせることは可能です。

AGAは完治しますか?

現在の医療技術ではAGAを完治させることは難しいとされています。

AGAは遺伝的要因と男性ホルモンの影響によってヘアサイクルが異常になり引き起こされる脱毛症です。AGAによって一度ヘアサイクルが乱れた毛包を現在の医療技術では元に戻せないため、完全に治すことはできません。

ただし、適切な治療やケアを行うことで、AGAの症状の進行を遅らせたり、症状の軽減を図ることは可能です。

AGAは若いと進行が速いですか?

若い年齢でAGAが発症した場合、進行が速いと言われています。若い年齢でAGAが発症する場合、家族歴や遺伝的要因が影響していることが多いです。

遺伝的に感受性の高い毛包は、男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)による影響を受けやすく、進行が速い傾向があります。

また、若い年齢ではホルモンバランスが活発な時期であり、男性ホルモンのテストステロンがDHTに変換される割合が高いことがあります。

抜け毛が増える前兆とは?

抜け毛が増える前にいくつかの前兆が現れることがあります。

髪が細くなったように感じたり、髪のボリュームの減少、枕や排水溝に落ちる髪の毛が増えたりする場合は要注意です。これらの前兆が一つ以上当てはまる場合、専門医の診断を受けることがおすすめです。

早期に診断を受けて適切な治療を行うことで、抜け毛の進行を遅らせることが可能です。特にAGAの場合、早い段階での治療が効果的であることが多いです。

抜け毛は何本からやばい?

抜け毛が「やばい」と判断される本数は個人によって異なります。一般的には、一日に50〜100本程度の抜け毛は正常な範囲とされています。

しかし、個人の髪の毛の量や密度、ヘアサイクルによっても変わるため、正確な本数を一概に示すことは困難です。もし抜け毛が増えてきたと感じる場合や髪の毛に異常があると感じる場合、早急なクリニックの受診をおすすめします。

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まとめ:AGAは発症したら終わりじゃない!

aga 発症したら終わりまとめ

AGAは完治させることが難しいため、発症したら終わりとも言われる病気です。

しかしAGAが発症しても、適切な治療を行うことでAGAの進行を遅らせたり、改善させたりできる可能性が高まります。

AGAの治療には、医薬品の他にも、育毛剤雨あ外科手術など、さまざまなアプローチがあります。

AGAは早期の段階で対策を始めることが重要で、専門医のアドバイスを受けることが推奨されています。個人に合った治療法を選択し、適切なケアを続けていきましょう。

この記事の監修医師

金 仁星(キム インソン)医師

監修医師 金 仁星(キム インソン)

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大阪大学医学部卒業後、地元の病院で臨床研修を修了。 その後、医療法人 友広会の理事に就任、同法人のAGAメディカルクリニックで勤務。
  • この記事を書いた人
伊藤 真実(Ito Mami)

伊藤 真実(Ito Mami)

健康・医療・美容ジャンルを得意とするライター。自ら施術やカウンセリングを受けて比較検証。さらに、専門的な知識を持つ医師への取材を重ね、信頼性の高いコンテンツ作りを心掛けている。