クラミジアは性感染症の中でも最も感染者が多く、特に若者に蔓延している深刻な疾患です。しかし、自覚症状に乏しいため、感染に気づかず放置してしまうケースが後を絶ちません。放置すると、男性では精巣上体炎や不妊症、女性では子宮内膜炎や卵管炎、不妊症などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。
この記事では、クラミジアの感染経路や症状、検査・治療法、予防法について詳しく解説します。感染が疑われる場合は、迷わず医療機関を受診し、適切な対処を行うことが何より大切なので、クラミジアかもと心配な方は、ぜひ参考にしてください。
目次
クラミジアとは?すでに感染している人との性行為で感染する性感染症の一種
クラミジアとは、性感染症の一種で、クラミジア・トラコマチスという細菌によって引き起こされます。主に性行為によって感染が広がり、すでにクラミジアに感染している人との性的接触によって感染が広がります。
ここでは、クラミジアの特徴を深掘りしていきます。
日本において最も多い性感染症。近年わずかに増加傾向にあり
クラミジアは、日本において最も多く報告されている性感染症の一つでもあります。厚生労働省の統計によると、近年わずかながら増加傾向にあります。
特に若い世代での感染が目立ちます。若者の間で感染が広がる理由としては、性行動の活発化や、予防に対する意識の低さなどが考えられるでしょう。
感染しても症状が出ないことが多いため注意が必要
クラミジアの怖いところは、感染しても症状が出ないことが多いという点です。そのため、知らないうちに他の人に感染を広げてしまう可能性も。また、症状が出ない間に病気が進行し、深刻な合併症を引き起こすこともあります。
クラミジアは適切な治療を受ければ完治する病気です。しかし、放置すると不妊症などの重大な問題に繋がる可能性があるため、不特定多数との性行為を避け、パートナーとともに定期的に検査を受けることが大切です。
クラミジアの感染経路のウソ・ホント
クラミジアの感染原因には、様々な誤解や都市伝説が存在するのも事実です。
ここでは、クラミジアの感染経路に関する代表的なウソ・ホントについて、詳しく解説します。
性行為による感染が主な経路。感染者との1回の性行為での感染確率は30〜50%
クラミジアの主な感染経路は、感染者との性行為やオーラルセックスです。感染した人の体液(膣分泌物や精液など)に含まれるクラミジア菌が、相手の粘膜に付着することで感染が起こります。
感染者との1回の性交渉で30〜50%の確率で感染するとされており、一般的には女性の方が感染しやすいと言われています。
しかし、20歳代で全く無症状の男性に尿の検査を行うと、4~5%でクラミジアが発見されたという報告もあるため、男女ともに感染には注意が必要です。さらに、同性間の性行為でも感染リスクがあることを知っておく必要があるでしょう。なお、新生児の場合には、母親からの産道感染でクラミジアになるケースもあります。
今回の初尿によるスクリーニング調査により無症状の若年成人男子において5%程度のC.trachomatis感染率であることが証明された
林謙治, et al. 無症状の若年成人男子における Chlamydia trachomatis 感染率 初尿検査によるスクリーニング調査. 感染症学雑誌, 1990, 64.11: 1447-1453.
キスでの感染はほとんどないが可能性はゼロではない
キスによるクラミジアの感染については、可能性はあるものの、非常にまれだと考えられています。クラミジア菌は主に性器や喉の粘膜に感染するため、唾液だけでの感染リスクは低いです。
しかし、咽頭クラミジアのように感染者の喉に菌がいる場合、深いキスなどで唾液がたくさん交換されると、理論上は感染の可能性があります。ただし、この経路での感染はほとんど報告されていません。
キスよりも、口腔性交などの性行為での感染リスクの方がはるかに高いことを覚えておきましょう。
トイレ・お風呂・温泉でも感染するはウソ
クラミジアがトイレの便座や、お風呂、温泉などの共用施設で感染するというのは、ほぼウソです。クラミジア菌は乾燥に弱く、体外では長時間生存できません。そのため、これらの場所で感染するリスクは極めて低いと言えます。
トイレの便座や浴槽の縁などに付着した菌が、すぐに他の人の粘膜に接触する可能性は非常に低く、また、お湯や水の中では菌が薄まってしまうため、感染の可能性はさらに低くなります。
ただし、タオルや下着など、感染者の体液が付着した物を直接共用すると、理論上は感染の可能性があります。しかし、この経路での感染もまれです。
クラミジアは主に性行為によって感染する病気だということを覚えておきましょう。不必要に怖がる必要はありませんが、性行為の際には必ずコンドームをつけるなど適切な予防措置を取ることが大切です。
性器クラミジア感染症と感染部位
性器クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスという細菌による性感染症で、主に性器や尿道、直腸、咽頭などに感染します。
主な感染部位は以下の通りです。
【男性】尿道や肛門(クラミジア性尿道炎)
男性のクラミジア感染で最も多いのが、尿道炎です。クラミジアに感染した女性との性行為により、男性の尿道にクラミジアが感染することで発症します。
主な症状は、尿道からの排膿や排尿時の痛み・不快感で、尿道口が赤く腫れることもあります。また、肛門性交によって直腸にも感染する可能性があります。
【女性】膣(クラミジア性子宮頸管炎)
女性のクラミジア感染では、子宮頸管炎が最も一般的です。クラミジアに感染した男性との性交渉により、膣や子宮頸管にクラミジアが感染することで発症します。
主な症状は、異常な膣分泌物の増加や、性交痛などですが、男性の尿道炎に比べると症状が現れにくいのが特徴です。
【男性・女性】喉(咽頭クラミジア)
男女ともにオーラルセックスにより、咽頭つまり喉へのクラミジア感染も起こり得ます。感染者の性器を口で愛撫することで、クラミジアが口腔・喉へ感染。
主な症状は、喉の痛みや違和感、発熱などですが、無症状のことも多いです。
次の章からは、今紹介したクラミジアの感染部位ごとに症状や感染期間などを詳しく解説していきます。
「クラミジア性尿道炎」の基礎知識
クラミジア性尿道炎は、男性に多く見られるクラミジア感染症の一形態です。クラミジアに感染した女性との性的接触により、男性の尿道にクラミジアが感染することで発症します。
ここでは、クラミジア性尿道炎の症状や感染経路、潜伏期間、検査・治療法などについて詳しく解説します。
クラミジア性尿道炎の主な症状|排尿時の違和感や痛みが代表的
クラミジア性尿道炎の主な症状は以下の通りです。
・排尿時の違和感や痛み
・透明または粘着性のある分泌物の発生
・無症状の場合もあり
なかでもクラミジア性尿道炎の代表的な症状が、排尿時の違和感や痛みです。尿道にクラミジアが感染することで炎症が起こり、尿を出す際にヒリヒリとした痛みや不快感を感じるようになります。排尿後に尿道口が痛むことも多いようです。
尿道からの分泌物の増加も特徴的な症状と言えます。クラミジアによる炎症により、尿道から透明または白濁した粘着性のある分泌物が出るようになり、下着が汚れていることに気づくこともあるでしょう。
ただしクラミジアに感染しても無症状のことがあり、自覚症状がないまま感染を広げてしまうケースも少なくありません。実際、感染者の約50%は無症状だと言われています。定期的な性感染症検査を受けることが重要です。
クラミジア性尿道炎の感染経路|性行為による女性の性器・咽頭から男性の尿道
クラミジア性尿道炎の主な感染経路は、感染者との性行為です。クラミジアに感染した女性の膣や子宮頸管、咽頭に存在するクラミジアが、性交渉やオーラルセックスを通じて男性の性器に感染します。
クラミジア性尿道炎の潜伏期間|感染後1週間〜3週間
クラミジア性尿道炎において、クラミジアに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、およそ1週間から3週間と考えられています。つまり、感染後しばらくは無症状の期間が続き、その間は自覚なく感染を広げてしまうリスクがあるので注意しましょう。
クラミジア性尿道炎の検査方法|尿検査
クラミジア性尿道炎の検査は、尿検査によって行われます。具体的には、尿道から採取した尿を用いて、クラミジアの遺伝子を調べる核酸増幅法(PCR法など)が一般的です。
尿検査は、感染から1週間程度経過していれば、90%以上の精度でクラミジアを検出できるとされています。検査自体は数分で終わる簡単なものですが、結果が出るまでに2~3日かかることが多いです。
クラミジア性尿道炎の治療方法|抗生物質の飲み薬
クラミジア性尿道炎の治療は、抗生物質の内服によって行われます。クラミジアはテトラサイクリン系やマクロライド系の抗菌薬に感受性があり、ドキシサイクリンやアジスロマイシンなどの薬が処方されるのが一般的です。
「クラミジア性子宮頸管炎」の基礎知識
クラミジア性子宮頸管炎は女性に多く見られるクラミジア感染症の一形態です。特に性活動の活発な女性に多く見られますが、症状が自覚しにくいことから、知らぬ間に感染が進行しているケースも少なくありません。
ここでは、クラミジア性尿道炎の症状や感染経路、潜伏期間、検査・治療法などについて詳しく解説します。
クラミジア性子宮頸管炎の主な症状|おりものの量が増える
クラミジア性子宮頸管炎の主な症状は以下の通りです。ただし、クラミジアに感染しても無症状のことが多く、多くの女性は自覚症状がないと言われています。
- おりものの量が増える・においがキツくなる
- 性器の違和感やかゆみ
- 不正出血や下腹部の痛み
クラミジア性子宮頸管炎の代表的な症状の一つが、おりものの変化です。クラミジアによる炎症により、おりものの量が増えたり、色が黄色っぽくなったり、においがキツくなったりすることがあります。下着が汚れやすくなったらクラミジアを疑ってみましょう。
また、性器の違和感やかゆみを感じることもあります。クラミジアによる炎症が膣や外陰部に広がることで、性器のかゆみや不快感が生じます。かゆみが強い場合は、脂漏によるかぶれを併発していることもあるでしょう。
加えて、不正出血や下腹部の痛みが現れることもあります。特に、性交渉後の出血や月経周期とは関係のない出血は要注意です。クラミジアによる子宮頸管炎が広がり、子宮内膜や卵管に炎症が及ぶと、下腹部の痛みを感じるようになります。
クラミジア性子宮頸管炎の感染経路|性行為による女性の性器・咽頭から男性の尿道
クラミジア性子宮頸管炎の主な感染経路は、感染者との性行為です。性行為を通じて、クラミジアに感染した男性の尿道に存在するクラミジアが、女性の腟や子宮頸管部に感染します。
感染が子宮から卵管へ進むと卵管の閉塞が起こり、不妊症の原因となることがあります。また、妊娠中に感染すると産道感染(産道を通じて新生児に感染)することもあります。
クラミジア性子宮頸管炎の潜伏期間|感染後1週間〜3週間
クラミジア性子宮頸管炎に感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、およそ1週間から3週間と考えられています。つまり、感染後しばらくは無症状の期間が続き、感染に気づかないまま性行為を続けてしまうリスクがあるのです。
クラミジア性子宮頸管炎の検査方法|尿検査もしくは子宮頚部や膣分泌物の採取による検査
クラミジア性子宮頸管炎の検査は、尿検査か子宮頚部や膣分泌物の採取によって行われます。尿検査の場合は、膀胱に2時間以上溜めた尿を用いて、クラミジアの遺伝子を調べる核酸増幅法(PCR法など)が一般的です。
クラミジア性子宮頸管炎の治療方法|抗生物質の飲み薬
クラミジア性子宮頸管炎の治療は、抗生物質の内服によって行われます。クラミジアはテトラサイクリン系やマクロライド系の抗菌薬に感受性があり、ドキシサイクリンやアジスロマイシンなどの薬が処方されることが多いです。
服用後は感染が治癒することがほとんどですが、治療を中断すると菌が残存する可能性があるため、医師の指示に従って服用を続けることが重要です。
「咽頭クラミジア」の基礎知識
咽頭クラミジアは、主に口腔性交などの性行為を通じて感染が広がるクラミジア感染症の一形態です。主に、クラミジアに感染した人とのオーラルセックスにより、口腔・咽頭にクラミジアが感染します。
ここでは、咽頭クラミジアの症状や感染経路、潜伏期間、検査・治療法などについて詳しく解説します。
咽頭クラミジアの主な症状|喉の違和感や痛み。無症状の場合もあり
咽頭クラミジアの代表的な症状は、喉の違和感や痛みです。クラミジアによる炎症が喉に広がることで、喉の痛みや不快感、違和感などを感じるようになります。喉の奥が赤く腫れぼったくなることもあるでしょう。また、発熱や頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。
ただし、症状が軽いため、感染に気づかないまま放置されることが多く、感染を広げるリスクが高いです。
咽頭クラミジアの感染経路|性行為による尿道や膣の分泌、唾液から咽頭への接触
咽頭クラミジアは、主にオーラルセックスによって感染します。感染者の性器や咽頭からの分泌物が、口腔内に接触することで喉に感染します。また、感染者との唾液を介した接触でも感染の可能性がありますが、そのリスクは低いとされています。
咽頭クラミジアの潜伏期間|感染後1週間〜3週間前後
咽頭クラミジアの潜伏期間は、通常、感染後1週間から3週間程度です。この期間中に症状が現れる場合もありますが、無症状であることが多いため、感染リスクのある行動を取った場合には、症状の有無にかかわらず検査を受けることが重要です。
咽頭クラミジアの検査方法|うがい液や喉の粘膜の採取
咽頭クラミジアの検査は、うがい液や喉の粘膜を採取して行われます。具体的には、うがいをした液体や、喉の奥の粘膜を綿棒で擦過して採取したサンプルを用いて、クラミジアの遺伝子を調べる核酸増幅法(PCR法など)が一般的です。
検査は簡単で、結果も比較的早く出るため、感染の疑いがある場合には早めに検査を受けるようにしましょう。
咽頭クラミジアの治療方法|抗生物質の飲み薬
咽頭クラミジアの治療は、抗生物質の内服によって行われます。クラミジアはテトラサイクリン系やマクロライド系の抗菌薬に感受性があり、ドキシサイクリンやアジスロマイシンなどの薬が処方されます。
クラミジアは自然治癒しない!放置したときのリスク
クラミジアは、性感染症の中でも最も感染者数が多く、特に若い世代での蔓延が問題となっています。
しかし、クラミジアには自然治癒はなく、放置すると重大な健康被害につながるリスクがあることを覚えておきましょう。
【男性】精巣上体炎や男性不妊症の発症リスク
男性の場合、クラミジアを放置すると、精巣上体炎や尿道炎が進行し、最終的には男性不妊症の原因となる可能性があります。
精巣上体炎とは、精巣の上部にある精巣上体に炎症が起こる病気で、陰嚢の痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。放置すると、精巣上体炎は慢性化してしまい、精子の通り道である精巣上体に瘢痕(傷跡)が残ってしまうことがあります。精巣上体に瘢痕ができると、精子の通過が妨げられ、男性不妊症に繋がる可能性があるのです。
【女性】子宮内膜炎や卵管炎、不妊症などのリスク
女性では、クラミジア感染が進行すると、子宮内膜炎や卵管炎を引き起こし、不妊症のリスクが高まります。
子宮内膜炎は、子宮内膜に炎症が起こる病気で、下腹部の痛みや発熱、不正出血などの症状が現れます。また、卵管炎は卵管に炎症が広がる病気で、放置すると卵管が癒着してしまい、不妊の原因になることがあります。
クラミジアの予防方法
クラミジアを予防するためには、感染リスクの高い行為を避けることが大切です。特に、感染の有無がわからない不特定多数の人との性的接触は、クラミジアに感染するリスクを高めてしまいます。
ここでは、クラミジアの予防法について、性行為時の注意点や定期的な検査の重要性を解説します。
性行為を行う場合はコンドームを使用する
クラミジアの感染を防ぐためには、性行為の際にコンドームを使用することが何より重要です。
性行為中に正しく使用することで、感染のリスクを大幅に低減できます。特に新しいパートナーとの性行為や、不特定多数のパートナーとの性行為の際には、必ずコンドームを使用するようにしましょう。
不特定多数との性行為は避ける
クラミジアの感染を防ぐためには、不特定多数の人との性行為は避けるのが賢明です。特に、感染の有無がわからない相手とのワンナイトラブは、クラミジアに感染するリスクが高いと言えます。信頼できるパートナーと性行為を行うことが感染予防に繋がるでしょう。
定期的に医療機関で診断してもらう
クラミジアは自覚症状が現れにくいことから、感染に気づきにくいというデメリットがあります。特に女性の場合、約70〜80%が無症状で経過するため、定期的な診断を受けないと感染を見逃してしまうリスクが高いです。
特に、過去に感染リスクのある行動を取った場合は、早めの診断を受けることが重要です。
感染の疑いがある場合はパートナーにも検査してもらう
もしクラミジア感染が疑われる場合、パートナーも一緒に検査を受けることが必要です。
実際、感染が判明しても、パートナーが無症状の場合は検査を受けないケースが多いのですが、そのままでは治療後も再感染を繰り返してしまうリスクが高くなってしまいます。また、両者が治療を完了するまで性行為を控えるようにしましょう。
まとめ:クラミジアの放置は危険!感染の可能性があればすぐ受診しよう
クラミジアは放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性がありますが、早期に発見し、適切に治療を受けることで完全に治癒することができます。
しかし、自覚症状が現れにくいことから、感染に気づかないまま放置されるケースが後を絶ちません。
クラミジアにならないためにも、性行為にける予防策を徹底し、定期的な検査を受けることで、自分自身とパートナーの健康を守ることができます。もし。感染の可能性があると感じたら、すぐに医療機関を受診し、適切な検査と必要な治療を受けましょう。