日常生活における小さなサインから、深刻な健康問題まで、不眠はさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、不眠症かと思った際に病院にいく適切なタイミングや何科を受診すればいいのかなど、不眠症治療について詳しく解説しています。
以前のような健やかな眠りを取り戻す参考にしてください。
目次
週3回以上の不眠が1ヶ月以上続くときは病院で受診しよう
週3回以上の不眠が1ヶ月以上続く場合は、専門の病院で受診しましょう。
長期間の不眠は日中の眠気や日常生活に支障をきたすだけでなく、心身の健康にも悪影響を及ぼします。特に、症状が重い場合や、ほかの疾患や病気の影響が考えられる場合、医療機関での診察や治療が必要となることがあります。
また、睡眠に関する悩みや疑問を持つ方は、タイミングを気にせず早めに専門家の意見を求めることをおすすめします。
不眠症が長期 (数ヶ月以上)にわたり持続すると,交感神経緊張や視 床下部-下垂体-副腎皮質系機能の亢進など生理的過覚 醒と呼ばれる状態に陥るため不眠が重症・難治化するこ とが知られている.
三島和夫. 高齢者の睡眠と睡眠障害. 保健医療科学, 2015, 64: 27-32.
悩み別!不眠症かもと思った時に受診する診療科
不眠の原因や症状によって、受診すべき診療科は異なります。
では、どこに受診すれば良いのか、以下で主な診療科とその特徴を詳しく解説します。自分の症状や悩みに合わせて適切な科を選んで受診しましょう。
【かかりつけ医・内科】軽い不眠症や精神科に行きにくい場合
軽い不眠症の場合や、精神科への受診に抵抗感を感じる方は、近くのかかりつけ医を訪れると良いでしょう。
日常生活でのストレスや生活習慣の乱れが不眠の原因となっている場合、内科では生活習慣の改善アドバイスや軽い睡眠薬の処方を受けることができます。
ただし、睡眠障害が疑われる場合は、専門的な医師の診察を受けることが重要です。
【精神科・心療内科】ストレスなどの心理的要因もある場合
ストレスや心の悩み、うつ病のような疾患が不眠の原因となっている場合、精神科や心療内科、またはメンタルクリニックでの受診を考えると良いでしょう。
心の悩みやストレス、不安からくる眠りの問題を解消するためのカウンセリングや薬物療法を受けられます。
【呼吸器科・耳鼻咽喉科】睡眠時無呼吸症候群やいびきなどの症状がある場合
睡眠時無呼吸症候群やいびきが不眠の原因となっている場合、呼吸器科や耳鼻咽喉科で受診しましょう。
睡眠の質が低下する原因として、睡眠時無呼吸症候群やいびきによる呼吸の異常が考えられます。
【睡眠外来を設置している病院】より専門的な検査を受けたい場合
不眠の原因がはっきりしない場合や、より専門的な検査を受けたい方は、睡眠外来を設置している病院や名医のいる専門の医療機関の受診をおすすめします。
専門的な医師による詳しい診察や検査を受けることができ、各症状に対応した治療を受けることが可能です。
【小児科・内科・精神科】子どもの睡眠障害がある場合
子供、特に中学生などの成長期にあるお子さんが不眠や睡眠障害に悩む場合、原因や症状に応じて小児科や内科、または精神科で受診しましょう。
お子さんの場合、成長や学業に影響が出ることもあるため、早めの対応が必要です。
病院で受けられる不眠症の治療は2種類
病院での不眠症治療は、大きく「薬物療法」と「非薬物療法」の2つの方法に分けられます。
それぞれの治療法の特徴やメリット、デメリットを詳しく見ていきましょう。
①睡眠薬の処方などの薬物療法
薬物療法は、不眠症の症状を和らげるための薬を使用する治療法です。主に、睡眠薬が処方されます。
長期間の使用には副作用のリスクもあるため、医師との十分な相談が必要です。
②生活習慣の指導や認知行動療法などの非薬物療法
非薬物療法は、薬を使用しないで不眠症の症状を改善する方法です。
生活習慣の指導や認知行動療法が含まれ、日常生活の中での生活習慣の見直しやカウンセリングを通じて、不眠の原因を取り除く治療が行われます。
ただし、効果を実感するまでには時間がかかることもあるため、根気強く取り組むことが大切です。
不眠症を悪化させないために自宅でできる6つの方法
自宅でできる簡単な方法で、不眠症の症状を和らげられる可能性があります。
不眠症を悪化させないための6つの方法を詳しく解説します。病院に行くのに抵抗がある方は、より質の良い睡眠を得る工夫をしてみましょう。
①覚醒作用のあるカフェインやアルコールを夕方以降に摂取しない
夕方以降のカフェインやアルコールの摂取は、睡眠の質を低下させる原因となることがあります。なぜなら、カフェインやアルコールは覚醒作用を持っているためです。
例えば、夜のカフェラテやワインは、一時的にリラックス感を得られるかもしれませんが、実際には深い眠りを妨げることがあるので注意しましょう。
睡眠習慣に起因する不眠も多いため,運動不足,長すぎる昼寝,カフェインや喫煙の過剰摂取,寝酒(深睡眠を減少させる),服薬状況などについて問診し,必要があれば是正する.
三島和夫. 高齢者の睡眠と睡眠障害. 保健医療科学, 2015, 64: 27-32.
②睡眠の1時間前からパソコンやスマートフォンを操作しない
私たちの生活に欠かせないスマートフォンやパソコン。しかし、これらのデバイスから放たれる青色光は、私たちの体内時計を乱し、寝つきを悪くする一因でもあります。
睡眠の質を上げるためには、就寝前1時間はスマートフォンやパソコンの使用を避け、リラックスした環境を作ることが大切です。
住宅環境での照明光のブルーライト成分が睡眠覚醒に及ぼす影響についての研究 [13] では,夜間の就寝前,人口照明からのブルーライトを遮光することにより,メラトニンが増加し,眠気が有意に増すことが報告された.
松尾周汰, et al. 室内照明が与える睡眠状態やメンタルヘルスへの影響. 研究報告マルチメディア通信と分散処理 (DPS), 2021, 2021.6: 1-6.
③ストレス解消法を見つける
日常生活の中でのストレスや悩みは、不眠の大きな原因となります。ストレスが積み重なると、深い眠りを得ることが難しくなることも。
さまざまな心理社会的ストレスが誘因となって緊張が高まり不眠が出現する
三島和夫. 高齢者の睡眠と睡眠障害. 保健医療科学, 2015, 64: 27-32.
そこで、ストレスや悩みを解消する方法を見つけることが重要です。深呼吸やヨガ、好きな音楽を聴くなど、自分に合った方法で日常のストレスを解消しましょう。
④寝室や寝具などの環境を快適にする
快適な睡眠環境を整えることも、質の良い眠りをサポートするうえで大切な要素です。寝室の温度や湿度、寝具の寝心地の良さなど、細かな部分に気を付けることで、より良い眠りに繋がります。
また、寝る前にリラックスできるアロマを焚くなど、五感を使ってリラックスする環境を整える方法もおすすめです。
衣服や寝 具を用いた場合,睡眠に影響を及ぼさない温度の上限は 28℃と言われる 36).しかし,高齢者では 27.7℃でも睡眠が 妨げられており 7),年齢を考慮する必要がある.
水野一枝. 環境温湿度と睡眠. 睡眠口腔医学, 2016, 2.2: 89-93.
⑤太陽の光を浴びる
太陽の光には、体内時計をリセットする効果があります。日中、特に朝の時間に太陽の光を浴びることで、体内時計が正常に戻り、夜になると自然と眠気が訪れるようになるでしょう。
睡眠を促すホルモンであるメラトニン は,日中の光曝露が多いほど夜間に高濃度に分泌される.日中に十分な光を照射することは極めて重要であり,積極的に外出させることや,あるいは太陽光の当 たる部屋で日中を過ごさせることが睡眠の全般的改善 につながり得る.
志村哲祥; 高江洲義和. 1. 高齢者不眠の病態と対応. 日本老年医学会雑誌, 2017, 54.3: 323-328.
⑥睡眠前2時間以内の食事を控える
眠る直前に食事をとると睡眠の質が下がる可能性があるため、睡眠前2時間以内の食事を控えるようにしましょう。
また、煙草に含まれるニコチンには覚醒作用があるため、喫煙も避けるのがおすすめです。
休養不十分群で50%以上を占めていた項目は、 [食事]の「就寝前の2時間以内に夕食をとることが週 に3回以上ある」(64.7%)と「人と比較して食べる 速度が速い」(57.9%)であった。
北川敦子, et al. 金融業に勤務する男性社員の睡眠による休養と生活習慣・心身状態との関係. 金沢大学つるま保健学会誌, 2010, 34.2: 129-133.
不眠症の病院に関するよくある質問
不眠症で病院に行った場合かかる費用はどれくらいですか?
不眠症の治療にかかる費用は、クリニックや治療内容によって異なりますが、一般的に3,000円〜5,000円程度です。
土日や夜間でも受診できるクリニックはありますか?
一部、土日や夜間にも診療を提供しているクリニックもあります。
睡眠時間は足りてるのに、日中急に眠たくなったり寝てしまいます。この場合も受診した方が良いですか?
十分な睡眠時間を取っているにも関わらず、日中に強い眠気が襲ってくる場合、それは睡眠の質が低下しているか、過眠症のサインかもしれません。また、予期せずに突然眠ってしまう現象は、ナルコレプシーの疑いもあります。
日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があるため、専門の医療機関での受診を考えましょう。
中学生や高校生は何科を受診したら良いですか?
中学生のうちは、小児科の受診も選択肢として考えられます。必要に応じて、内科や精神科、心療内科への紹介を受けることも考慮しましょう。
まとめ:睡眠不足による不調を感じたらすぐに受診しましょう
不眠症の治療には、薬物療法だけでなく、生活習慣の見直しやカウンセリングなど、多岐にわたる方法が考えられます。
一人で悩まず、専門家の意見を取り入れながら、快適な眠りを取り戻しましょう。