夜中の目覚めや疲れた朝。それは一時的なものではなく、深刻な睡眠障害のサインかもしれません。
この記事では、睡眠障害のチェックリストを紹介します。不眠がもたらす日常生活への影響や原因、そして受診すべきタイミングについて詳しく解説しますよ。
質の良い眠りを取り戻し、健やかな毎日を過ごすための第一歩として、ぜひ役立ててみてくださいね。
目次
まずはセルフ診断!睡眠障害のチェックリスト
最近、日中の眠気や夜間の寝つきの悪さに悩んでいませんか?不眠の症状が気になる方は、まずは自分の状態を知るためのチェックシートやテストを利用することが大切です。
ここでは、セルフ診断できる睡眠障害のチェックリストをご紹介します。
<睡眠障害のチェックリスト>
・日中の眠気:日中に強い眠気を感じることが多い。
・夜間の寝つき:夜、なかなか寝つけない。
・中途覚醒:夜中に何度も目が覚める。
・起床時の疲れ:十分な睡眠時間があるにも関わらず、起床時に疲れを感じる。
上記の症状のうち、2つ以上当てはまる方は、睡眠障害の可能性が考えられます。ただし、あくまでセルフチェックリストなので、適切な診断を受けるためには専門機関を受診しましょう。
すぐに病院で受診すべき2つの症状
睡眠障害の中には、放置すると健康に深刻な影響を及ぼすものもあります。
その中で、特に注意が必要な2つの症状を解説します。
過去1ヶ月以上睡眠による不調に悩んでいる
1ヶ月以上も続く睡眠の不調は、単なる一時的なものではなく、深刻な疾患が潜んでいる可能性が高いため、健康を守るためには早めの受診が必要です。
病院の外来での診察を受けることで睡眠の質を向上させることに繋がるでしょう。また必要に応じて入院治療を受けることも考えられます。症状が重い場合や、専門的な治療が必要な場合は、すぐに予約をして専門の医師に相談しましょう。
強いストレスを感じる出来事に遭遇すると、多くの人が数日から数週間続く一時的な不眠を経験します。しかし、一部の人では不眠が1ヶ月以上にわたり持続します。不眠が週3日以上、3ヶ月以上持続する場合、治療が必要な慢性不眠症の可能性があります。
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部
日常生活に支障をきたしている
日中の強い眠気や活動中の集中力の低下は、日常生活や仕事に大きな支障をきたす可能性があります。このような症状は、ナルコレプシーや過眠症などの睡眠障害が原因であることも考えられます。
生活の中での集中力の低下や、仕事・家庭でのトラブルが増える場合は、すぐに専門の病院を受診するようにしましょう。
不眠症の4つのタイプ
最近、夜の質の良い眠りが得られず、日中の眠気や疲れに悩まされていませんか?
ここでは、不眠症の4つの主なタイプについて詳しく解説します。
1.寝つきの悪い「入眠障害」
入眠障害は、夜、なかなか寝つけない状態を指します。
大人だけでなく、赤ちゃんや幼児にも見られることがあり、不規則な睡眠時間や日常のストレスが原因で、不眠症のような症状を引き起こすことが考えられます。
2.途中で起きてしまう「中途覚醒」
中途覚醒は、一度眠りについた後、翌朝起床するまでの間に何度も目が覚めてしまう状態を指します。
十分な睡眠時間を確保するのが難しくなるため、日中の活動に影響を及ぼすことがある不眠症のタイプです。
3.早く起きてしまう「早朝覚醒」
早朝覚醒は、通常の起床時刻の1~2時間以上前に目が覚めてしまい、その後眠れない、または熟睡できない状態を指します。
睡眠時間が不十分なため、起床時に疲れを感じることが多くなるでしょう。
特に、うつ病の患者さんに多く見られる症状の一つで、睡眠のリズムが乱れることで日常生活にも影響を及ぼすことがあります。
4.寝た気がしない「熟眠障害」
熟睡障害は、十分な睡眠時間があるにも関わらず、起床時に疲れを感じる状態を指します。
夜間にしっかりと熟睡できていないため、日中に強い眠気を感じることが多いでしょう。熟睡が取れないと、体と心の回復が十分に行われず、日常生活のパフォーマンス低下にも繋がります。
睡眠障害をきたしやすい主な原因5つ
何度も夜中に目が覚めたり、朝、疲れたまま起きたりといった睡眠障害は、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。
ここでは、睡眠障害をきたしやすい主な原因5つについて、詳しく解説していきます。
1.ストレス・不安・悩みごとなどの「心理的原因」
心理的なストレス・不安・悩みごとは、睡眠障害の大きな原因となります。
特に中学生のような成長期の子供たちは、学校や友人関係の悩みからストレスを感じやすく、不眠の原因となることが考えられます。
2.コーヒーやタバコなどの「嗜好的原因」
コーヒーに含まれるカフェインやタバコに含まれるニコチンは覚醒作用があるため、過度な摂取は眠気を感じにくくさせ、結果として不眠を引き起こす可能性があります。
特に夜間に大量に摂取すると、質の良い睡眠が得られなくなることが考えられます。
睡眠習慣に起因する不眠も多いため,運動不足,長すぎる 昼寝,カフェインや喫煙の過剰摂取,寝酒(深睡眠を減少させる),服薬状況などについて問診し,必要があれば是正する.
三島和夫. 高齢者の睡眠と睡眠障害. 保健医療科学, 2015, 64: 27-32.
3.アルコールの摂取などの「生活習慣的原因」
アルコールは一時的なリラックス効果があるため、摂取すると眠りにつきやすくなると感じることもあるでしょう。
しかし、過度な飲酒は中途覚醒や頻尿にも繋がるため、睡眠の質を低下させる原因となり、不眠のきっかけとなることも考えられます。
飲酒量の多さは睡眠の質を低下させる可能性があり,適切な 純アルコール量の基準設定および健康教育の必要性が示唆された.
荒木章裕, et al. ロシアの寒冷地域在住高齢者の飲酒量と睡眠の関係: 横断研究. 日本老年医学会雑誌, 2020, 57.4: 458-466.
4.覚醒を促す成分を含む薬の副作用などの「薬理学的原因」
一部の薬には、覚醒を促す成分が含まれているため、不眠の原因となることがあります。
特に、自己判断で睡眠薬を使用すると影響が大きくなることがあるため、不眠の症状が気になる場合は専門の医師に相談することをおすすめします。
睡眠・覚醒は多様な神経系の影響を受けるため,向精神薬に限らず,さまざまな薬剤が不眠の原因となる可能性がある.
伊豆原宗人; 栗山健一. 薬剤性不眠とその周辺. 医学のあゆみ, 2022, 281.10: 979-984.
5.夜間の仕事や生活習慣などの「生理学的原因」
夜勤やシフト制の仕事、不規則な生活リズムは、体内時計を乱すことがあります。
日常のリズムや睡眠の習慣に影響を与え、健康に悪影響を及ぼすことが考えられるため、定期的な生活リズムを保ち、仕事や日常生活の質を向上させることが大切です。
また、上記の原因以外にも頻尿や更年期障害(特にホットフラッシュ)、疼痛やかゆみなどといった身体的要因も、睡眠障害の原因となる可能性があります。
夜勤がある勤労者と日中任務の勤労者を対象に集団 CBTI における不眠症状の改善効果を無作為化比較試験で検討した結果,日中勤務の勤労者で は不眠症状の改善が認められたが,夜勤がある勤労者では不眠症状の改善効果が認められ なかった
TAKANO, Y., et al. 第 6 章 不眠症状の重症度とプレゼンティーズムの関連 (研究 3) 3. 勤労者の不眠症状とプレゼンティーズムとの関連: 適切な支援につなげるための基盤研究, 49.
今日からできる!不眠を改善する対策方法
ここからは、不眠を改善する対策方法を解説していきます。
今日からできる簡単な方法ばかりなので、睡眠障害が疑われる方はぜひ試してみてくださいね。
ストレスの発散
趣味に没頭したり甘いものを食べたりなど、自分に適した方法で不眠の原因となっているストレスを発散させることが大切です。
仕事や人間関係などがストレスとなっている場合には、ストレスそのものから遠ざかる環境に身を置く必要もあるでしょう。
適度な運動・就寝前のヨガやストレッチ
適度な運動は、身体をリフレッシュさせるだけでなく、質の良い睡眠をサポートします。
特に、就寝前のヨガやストレッチは、身体の緊張をほぐし、深い眠りを促進します。日常の中で適度な運動を取り入れながら、睡眠の質を向上させていきましょう。
飲酒・喫煙・カフェインの摂取を減らす
アルコールやたばこ、カフェインの摂取を減らすことが、健やかな眠りに繋がります。
摂取することで一時的にリラックス効果があると感じることがありますが、実際には、睡眠の質を低下させる要因となっているので、睡眠障害が疑われるならアルコールやたばこ、カフェインの摂取を徐々に減らしていきましょう。
就寝前のパソコンやスマートフォンをやめる
ブルーライトが放出されるデバイス、特にパソコンやスマートフォンの使用は、眠りや寝つきを妨げる要因となると考えられています。
より良い睡眠をとるためにも、就寝前はパソコンやスマートフォンのスクリーンタイムを減らしましょう。
日中の昼寝時間を減らす
15時以降の昼寝は避けるようにしましょう。もし昼寝をする場合は、15〜20分程度にとどめることが理想的です。
日中の眠気を感じる場合、昼寝は短時間であればリフレッシュ効果がありますが、長時間になると夜の眠りを妨げ、不眠の原因となることがあります。
寝室を快適な環境に整える
寝室の環境は、良質な眠りを得るために非常に重要です。適切な寝具や適度な湿度、温度の調整など、寝室の環境を整えることで、不眠を予防し日中の眠気の軽減が期待できます。
無理に眠ろうとしない
睡眠時間を確保することは重要です。しかし、寝付けない場合には無理に眠ろうとするとかえって眠れなくなってしまうでしょう。無理に眠ろうとはせず、いっそのことベッドから起き上がってみるのも一つの手です。
また、寝付けない自分の状態を客観的に見つめ直すためにも、睡眠アプリなどを活用して日々の睡眠状態を記録してみましょう。
決まった時間に起きて日光を浴びる
睡眠障害や不眠症の改善には、生活習慣の見直しが重要です。その中でも、決まった時間に起きて日光を浴びることが大切です。
睡眠リズムを整えるためには、朝早く起きることがポイントです。朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠の質が向上すると言われています。
具体的な方法としては、毎日同じ時間に起きるように心がけましょう。また、起きた後に窓を開けて日光を浴びることも効果的です。日光には体内時計を調整する効果があり、眠りのリズムを整えることができます。
睡眠障害のチェックに関するよくある質問
睡眠障害で病院に行く時は何科を受診したら良いですか?
睡眠障害に悩む方は、かかりつけの内科や精神科、心療内科を受診することをおすすめします。
また、専門的な診断や治療を求める場合、最近増えてきた睡眠障害を専門とする睡眠外来を設置しているクリニックや病院の受診も考慮しましょう。
なお、睡眠時無呼吸症候群に見られるいびきのような特定の症状を自覚している方は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科の受診が適しています。
子どもでも不眠症になりますか?
乳児(赤ちゃん)や幼児、小学生や中学生でも、生活習慣の乱れや発達障害、精神的なストレスなどのさまざまな要因により、睡眠障害をきたすことはあります。
病院を受診せずに睡眠障害が長期化するとどうなりますか?
睡眠障害が長期化すると、身体や脳の機能、気分に影響をきたすようになります。特に、免疫機能の低下や高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることが知られています。
まとめ:不眠による不調が続いたり日常生活に支障をきたしている場合はすぐに受診しよう
不眠症や睡眠障害は、日中の眠気や集中力の低下、気分の悪化など、さまざまな症状を引き起こすため、仕事や家庭での生活にも大きな支障をきたすことが考えられます。
セルフチェックリストを活用しながら、不眠による不調や日常生活への影響を感じた場合は、早めに専門的な医師の診察を受けることをおすすめします。
適切な治療やアドバイスを受けて質の良い眠りを取り戻し、健やかな毎日を過ごしていきましょう。