睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査にかかる費用はいくら?保険診療で受けられる?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を徹底解説

2024年1月19日

きくち総合診療クリニック院長 菊池大和医師

監修医師 菊池 大和(きくち やまと) きくち総合診療クリニック院長・医療法人ONE理事長

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きくち総合診療クリニック院長・医療法人ONE理事長。 「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」を診療基本理念として掲げ、専門的な治療だけでなく予防・早期発見・早期治療を中心に地域医療に貢献している。

「日中に強い眠気がある」
「いびきがひどい」

という方は、睡眠時無呼吸症候群を発症している可能性が考えられます。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や脳卒中など、命にも関わる病気の発生リスクも上昇させる深刻な睡眠障害です。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群の検査にかかる費用を解説。検査は保険適用なのか、睡眠時無呼吸症候群の治療法やセルフチェックリストも紹介します。

あなたの健康やあなたの大事な家族を守る第一歩として、ぜひ参考にしてください。

保険診療可!睡眠時無呼吸症候群の検査・治療の費用

睡眠時無呼吸症候群の検査費と治療費

睡眠時無呼吸症候群の検査、および治療にかかる費用を紹介します。

保険診療の適用範囲、さらには自己負担の金額も解説するので、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は確認しておきましょう。

精密検査の費用は3万円が目安

病院での初診時には、簡易検査の費用は一般的に3,000〜3,600円、初診全体の費用はおよそ4,000円です。

しかし、もしも症状が重度であると医師に疑われる場合や、より詳しい検査が必要と判断された場合は、精密検査を受けることが推奨されます。

精密検査の費用は一般的に2.5〜4万円です。精密検査ではポリソムノグラフィーやセンサーを使用し、一晩の睡眠中の脳波や呼吸の状態を詳しく記録。検査結果をもとに、適切な治療方法や自己負担の金額などを医師から説明されます。

治療法により費用は変化

睡眠時無呼吸症候群の治療の選択には様々な種類があり、治療法によって費用や自己負担の額は大きく変わります。代表的な治療は、CPAP療法・マウスピース治療・外科的手術です。

CPAP治療の費用は、一般的に5千円前後。CPAP治療は、気道を開放するための装置を使用する治療法で、欧米や日本で多く普及している治療法です。

一方マウスピース治療法の費用は、1〜2万円外科的手術の費用は、一般的に3.5万円前後です。

睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックリスト

睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックリスト

ここでは、睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックリスト、ESS問診による日中の眠気を評価するための簡単な自己診断法を紹介します。

睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックリスト

座って読書中、テレビを見ているときに突然眠気を感じ、すぐに寝入ってしまう0点〜3点
昼寝をすることが多い0点〜3点
車の運転中に信号待ちや交通渋滞で停車したとき、眠くなることがある0点〜3点
昼食後、10分ほど横になって休むことが多い0点〜3点
テレビを見ているとき、眠くなることがある0点〜3点
会話をしている最中、突然眠気を感じる0点〜3点
運転中、信号待ちで停車したときに眠くなることがある0点〜3点
夜遅くまで起きていることが多い0点〜3点

各項目に点数をつけ、総合スコアを計算しましょう。スコアが10点以上の場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いとされているので要注意です。

主な症状は日中の眠気、集中力の低下や全身倦怠感などを認め、QOLの低下をもたら す。また、抑うつ気分、意欲の低下などのうつ病に共通する症状

内村直尚. 精神疾患と睡眠時無呼吸症候群. 精神神経学雑誌, 2010, 112: 906-11.

睡眠時無呼吸症候群の検査の流れ

睡眠時無呼吸症候群の検査の流れ

睡眠時無呼吸症候群の検査は、以下のような手順で進んでいきます。

【問診と初期評価】ESS問診で日中の眠気を数値化

検査の第一歩として行われるのが問診です。日中の眠気の度合いや関連する症状についての医師によるヒアリングが行われます。

さらに、眠気の度合いを数値化するため、セルフチェックにも活用されることの多いESS問診によるスクリーニングが行われます。

【簡易検査】自宅での睡眠時の呼吸回数や無呼吸を機械で測定

簡易検査として、自宅での睡眠時の呼吸の状態を測定します。

簡易検査では、専用の機械とセンサーを使用して、一晩の間に何回無呼吸が起きているのか、また呼吸の回数はどれくらいなのか詳しく記録します。非常に手軽でありながら、自宅のリラックスした環境で行えるため、少ない負担で検査が行えます。

【精密検査】ポリソムノグラフィー(PSG)で脳波・心電図・筋電図を記録

簡易検査の結果、さらに詳しい検査が必要と判断された場合には、精密検査として「ポリソムノグラフィー(PSG)」が行われます。

精密検査では、一晩の間に脳波、心電図、筋電図などのデータを詳しく記録することが可能です。

睡眠時無呼吸症候群の5つの治療・対策方法

睡眠時無呼吸症候群の改善方法

ここでは、睡眠時無呼吸症候群の治療法と対策方法について詳しく解説していきます。

CPAP治療や手術だけでなく、生活習慣の改善も睡眠時無呼吸症候群の治療の一環です。

【CPAP治療】圧力で気道を開く

CPAP治療は、連続陽圧呼吸療法とも呼ばれ、気道を開くための圧力を利用する治療方法です。

具体的には、特定の装置を通して酸素を供給し、その圧力で気道を開き続けることで、呼吸の停止を防ぎます。

【手術】アデノイド摘出や軟口蓋の手術をする

手術治療は、物理的な原因の場合に選択されることが多いです。

例えば、アデノイドの肥大や軟口蓋の問題、さらには口腔内の異常が原因で気道が狭くなっている場合、これらの部位を外科的な手術で取り除くことで、呼吸器の機能が改善されることが期待できます。

なお、症状の重さや患者さんの健康状態によっては入院が必要となることもあります。

【マウスピースの利用】顎の位置を調整する

マウスピースは、顎の位置を調整することで気道を確保し、呼吸の障害を軽減する役割を果たします。

実際の利用に際しては、歯科での専門的なカウンセリングやフィッティングが必要となることが多いです。

【生活習慣の改善】体重減少・禁煙・アルコール制限

生活習慣の改善は、睡眠時無呼吸症候群の予防や軽減に非常に効果的です。

特に、体重減少や禁煙、アルコールの制限は、気道の障害を減少させるための基本的な対策となります。生活習慣の見直しを通じて、症状の改善だけでなく、生活習慣病のリスクも下げることが可能です。

【睡眠時姿勢の工夫】なるべく横向きに寝る

睡眠時の姿勢の工夫も無呼吸の改善に効果的です。仰向けに寝ると舌が後ろに落ち、気道が閉塞しやすくなってしまいます。

一方、横向きに寝ることで気道の閉塞を防ぐことができるため、より安定した眠りを得ることができます。

睡眠時無呼吸症候群の基礎知識

睡眠時無呼吸症候群の基礎知識

ここでは、睡眠時無呼吸症候群のタイプや重症度のチェック指標など、睡眠時無呼吸症候群の基礎知識を紹介します。

睡眠時無呼吸症候群は2タイプ

睡眠時無呼吸症候群には、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」と「中枢性睡眠時無呼吸症候群」の2つのタイプが存在します。

【閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)】睡眠中の筋弛緩により気道が閉塞

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中にのどが筋弛緩し、気道が閉塞することで呼吸が一時的に止まる状態です。つまり、物理的な障害によって呼吸が停止するものです。

この状態が繰り返されることで、質の良い睡眠が取れなくなり、日中の眠気や疲れを引き起こすことがあります。

特に、肥満の方は脂肪の蓄積により気道が狭くなるため、このタイプになるリスクが高いです。

【中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)】脳の呼吸中枢の働きの異常で呼吸できなくなる

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は、睡眠中に脳の呼吸中枢の働きに異常が生じることで、一時的に呼吸が停止する症状です。つまり、脳の呼吸中枢が正常に機能しないことで、呼吸そのものができなくなる状態です。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と比べると、発症するのは比較的まれです。神経系の疾患や特定の薬物の影響など、さまざまな原因によって発症すると考えられています。

重症度は無呼吸定呼吸指数(AHI)でチェック

睡眠時無呼吸症候群の重症度を知るための指標として、無呼吸定呼吸指数(AHI)で用いられます。

無呼吸定呼吸指数(AHI)は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示し、検査を通じて得られる結果によって重症リスクを評価。高い数値が示されるほど、症状が重いと判断されます。

睡眠時無呼吸症候群の検査に関するよくある質問

睡眠時無呼吸症候群は何科を受診したらいいですか?

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、近くに睡眠科があれば最初に受診することをおすすめします。
もし睡眠科が利用できない場合、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、歯科・口腔外科、内科、精神科などでも診察が可能です。

自覚症状がないので放っておいて大丈夫ですか?

夜中に何度も目が覚める経験や家族からの指摘がある場合、放置せず一度受診することが重要です。
睡眠時無呼吸症候群は、心臓への負担を増やし、高血圧や心臓病、脳卒中のリスクを上昇させる可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の検査・治療に健康保険は適用されますか?

検査や治療に関しては、基本的には健康保険が適用されます。しかし、一部の医療機関では自由診療となる場合もあるので、受診前に確認しておきましょう。

まとめ:睡眠時無呼吸症候群が気になったら早めに検査を受けよう!

睡眠時無呼吸症候群(SAS)を徹底解説のまとめ

睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、早めの受診が重要です。高血圧や脳卒中など、命にも関わる病気の発生リスクにも関係する睡眠時無呼吸症候群だからこそ、検査を受けることで、状態を適切に把握しておきましょう。

また、多くの医療機関で健康保険が適用されるため、費用の面が気になる方でも治療を開始しやすいでしょう。早期の発見・治療で、健康な日常生活を取り戻してくださいね。

この記事の監修医師

きくち総合診療クリニック院長 菊池大和医師

監修医師 菊池 大和(きくち やまと) きくち総合診療クリニック院長・医療法人ONE理事長

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きくち総合診療クリニック院長・医療法人ONE理事長。 「病気を診て、人を診て、一人でも多くの命をやさしく包み込む医療を提供する」を診療基本理念として掲げ、専門的な治療だけでなく予防・早期発見・早期治療を中心に地域医療に貢献している。
  • この記事を書いた人
伊藤 真実(Ito Mami)

伊藤 真実(Ito Mami)

健康・医療・美容ジャンルを得意とするライター。自ら施術やカウンセリングを受けて比較検証。さらに、専門的な知識を持つ医師への取材を重ね、信頼性の高いコンテンツ作りを心掛けている。