一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏
(第14回) 若手育成は礼儀から =褒めずにチャンスを
人は褒めて育てるという考えが主流になり、医師の育成が難しくなってきたと言われる。後進の育成は天野氏にとって重要な仕事の一つだが、世間の風潮に合わせて若者に迎合するようなことはしない。
「われわれの世界はできて当たり前。結果がすべてだから、僕はあまり褒めることはしないですね。医学部長からは、優しく指導するように言われますが、医師の仕事は一つ間違えば人の命にかかわるから、どうしても厳しくなります」
医学生に対しては、診療態度にかかわる礼儀を徹底的にたたき込む。
「病院実習に来て、先輩へのあいさつができないのはもってのほかです。あいさつもできないようなヤツは患者を守れない。何かあったら、どこかで頬かぶりし逃げる可能性があるからです。礼儀は将来、患者に何かあったときに、きちんと謝罪して誠意を示すことにつながる。それが患者を守る医療安全の根幹だと思います」
どんなに優秀な心臓外科医でも、いつまでも一人ですべての患者を執刀し続けるわけにはいかない。後進を育てるために、若手にも執刀のチャンスを積極的に与える。「きちんと患者さんと信頼関係を築き、僕よりも患者さんのことを知っている、術後管理も責任をもって担当したい、とアピールしてくる者には、患者さんの協力を得て執刀の機会を与えています」。
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(2017/02/20 12:38)