嚥下障害と誤嚥性肺炎〔えんげしょうがいとごえんせいはいえん〕 家庭の医学

 肺炎は90歳以上の死因の第1位です。高齢者の肺炎の半数は誤嚥(ごえん)性肺炎です。
 高齢者が、むせたりせきばらいをしながら食事をしている場面に遭遇したとき、それはすでになんらかの嚥下(えんげ)障害を有しているサインです。この段階で医療機関へ相談することは少なく、肺炎を発症してはじめて嚥下障害が認識されることも少なくありません。
 誤嚥性肺炎の原因は、気づかない小さな脳梗塞が多発している、口腔(こうくう)内が不清潔、歯牙(しが)欠損や義歯不適合、胃液の逆流などがありますが、もっとも重要なのは、飲み込む反射、せき反射が弱くなることです。これには次の3点をチェックします。

●飲み込む反射・せき反射のチェックポイント
む  せどのような食品を食べたときにむせるか
せ  き食事中・食後のせき、夜間のせきの有無
たんの性状・量たんのからみはないか、量はふえていないか


■誤嚥性肺炎の予防対策
 誤嚥性肺炎の予防対策には次の6点があげられます。
 ①食後に三度三度歯をみがき、うがいをする。
 ②胃、食道逆流防止のため、就寝時には枕を高くし、腹部の圧迫は避ける。
 ③食事は、熱いもの、冷たいものは可、しかし嚥下反射の起きにくい温度(人肌の温度)は避ける。
 ④誤嚥が起こりやすい場合は、とろみを加える。
 ⑤唐辛子、酢などで嚥下反射、せき反射を強める工夫をする。
 ⑥嚥下体操などで嚥下反射、全身抵抗力を高める工夫をする。

(執筆・監修:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 理事長/国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐 鳥羽 研二)
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