日本ベクトン・ディッキンソン(日本BD)は7月、細胞分離解析装置(フローサイトメーター)に世界で初めて画像解析機能を搭載した次世代フローサイトメーター「BD FACSDiscover™S8セルソーター」を発売した。これに伴い、同社は7月27日に東京都でプレスセミナーを開催。登壇した国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所難病・免疫ゲノムセンターセンター長の山本拓也氏は次世代フローサイトメーターについて「がん免疫療法をはじめとした治療の他、ワクチン開発、創薬などさまざまな場面における個別化医療の実現に貢献する可能性がある」と期待を寄せた。

リアルタイムイメージング技術を搭載

 ヒトの細胞は、遺伝だけではなく生育環境や食事運動などのライフスタイル、病歴をはじめさまざまな影響を受けて状態が変化し、年齢に応じて多様化する。がんを含む多くの医療分野で個別化医療へのニーズが高まる中、個々の細胞の状態や特徴をより詳細に把握するための技術として、フローサイトメトリー法が注目されている。

 フローサイトメトリー法は、緩衝液中で細胞や血球、微生物などを1列に並べてレーザー光を照射し、散乱光や蛍光を検出して細胞の特性を解析する測定法。この原理を用いた解析装置をフローサイトメーターと呼ぶ。フローサイトメトリー法は基礎研究や臨床研究、医療機関での血液検査など、さまざまな場面で活用されている。

 これまで、フローサイトメトリー法で細胞を調べるには、フローサイトメーターで細胞を採取した後に顕微鏡で観察する必要があった。このたび発売されたBD FACSDiscover™S8セルソーターでは、顕微鏡を用いないリアルタイムイメージング技術BD Cellview™ Imaging Technologyを用いて蛍光検出と同時に大量の細胞を一度に視覚的に確認し、細胞の増殖、働き、他の細胞との相互作用や正確な位置などの表現型を迅速かつ詳細に解析する。

細胞の表現型情報を予防と治療に役立てる

 細胞の表現型は、がんの免疫療法で用いる薬剤やその組み合わせを、患者の状態を経時的に観察しながら選択する上で重要な情報である。山本氏は「細胞の表現型の情報をゲノム情報と合わせれば、既存の薬剤を組み合わせてより効果的な治療法を選択することもできる。将来だけではなく現在治療を受けている患者にも役立つ」と個別化医療の発展に期待を寄せる。

 また予防医療の分野でも、副反応が重症化しやすい人の細胞の詳細な情報を明らかにすることで、より安全性の高いワクチンを開発できる可能性がある。同氏は「今後解析技術が広く用いられるようになれば、安全性と有効性の高いワクチンの早期の開発や病気を事前に予測する検査・診断法の確立にも貢献できる」と展望した。

服部美咲