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血糖コントロール(下)=食品選びが大切

 生活習慣病予防やダイエットのためにカロリーや糖質を極端に制限すると、ホルモンのバランスが崩れ、かえって体に悪影響を及ぼす。「スローカロリー」の基本は血糖をゆっくり上げることだ。脂肪を蓄積しない糖質の選び方や食事の方法も視野に入れている。

 ◇中高生も高血糖

 武庫川女子大国際健康開発研究所が、2007~2008年に女子中高生243人、2009~2010年に男子中高生151人を対象に行った調査がある。空腹な状態で血糖値を測定したところ、高めの数値である100以上の生徒が女子中高生で約16%、男子中高生では約45%という結果が出た。同研究所講師で管理栄養士の森真理氏は「血糖値は食事をすると上がるので、通常、1日のうち食事を3回、間食を午前中に1回、3時に1回とすると、1日のうち5回血糖値が上下する」と指摘する。

 女子生徒の多くは体型を気にしてダイエットを心掛けているため肥満体型は少なく、5人に1人は痩せ型である。だが、瘦せ型であるにもかかわらず、血液検査の結果は血糖値だけでなく、中性脂肪にもまるでメタボリックシンドロームのような高い数値が現れた。体格は肥満ではないが血糖値が120を超えている生徒もいた。最も甚だしいのは、血糖値128だが、BMIは18.2というケースもあった。中性脂肪についても、最大が339でBMIは16.1(身長156.5センチ、体重39.4キロ)という18歳の生徒もいたという。

 森氏は「太ることを気にして食事を抜き、代わりにお菓子や菓子パン、ジュースをちょこちょこ取って済ませる生徒が少なくない。乱れた食生活の影響が血糖値や中性脂肪の数値に現れている。血糖値も中性脂肪も食事の影響を大きく受けやすいので、食習慣を改めるだけでも数値が改善される例も多い。規則正しい食習慣を送る事に気を配る必要がある」と話す。

 ◇血糖値をゆっくり上げる

 食後に血糖値が上がると、インスリンが分泌され血糖値を正常値まで下げる働きをする。血糖値が急上昇すればインスリンが多量に分泌されるが、緩やかに上昇すれば分泌量は少なく済み、膵臓(すいぞう)への負担が少なくなる。スローカロリーは、血糖値の上昇を緩やかに抑え、過剰な脂肪蓄積も抑える食べ方だ。単にカロリーを減らす、量を加減するという考え方と一線を画す。

 血糖値の上昇には、食品に含まれる糖質が大きく影響する。一般的には食品に含まれる糖質量が目安になるが、食材単品で食べることは少ないので、食べ合わせや食べ方で糖質の消化・吸収を工夫する。

インスリンの注射を受ける糖尿病患者(AFP時事)
 よく知られているのが 「ベジタブルファースト」だ。野菜を先に食べてから、メインのおかずとなる肉や魚などを取り、主食は最後にする。あまり早く食べるのは禁物。1回の食事にかける時間の目安は約20分とし、よくかんでゆっくり食べる。よくかむと唾液の分泌が高まり、満腹中枢が刺激されるため、少量でも満腹になって食べ過ぎを防ぐ。主菜には玄米や雑穀、副菜には根菜類、乾物など、できるだけ歯応えのある食品を選び、材料を大きめに切るなどの工夫をする。間食には、煎り大豆やナッツ、ドライフルーツなど腹持ちの良い物を選ぶようにするとよい。

 ◇消化・吸収が遅い食品を

 スローカロリーでポイントになるのは、食物繊維が豊富な食材だ。食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に大別される。特に海藻類やきのこ類、乾物類、こんにゃくなど、水溶性食物繊維を多く含む食品は、水に溶けて高い粘性を示すため、胃の中に滞留する時間が長くなり満腹感が持続する。さらに小腸内で糖質の消化・吸収を緩やかにし、急激な血糖値の上昇を抑えるとともに、血清コレステロール値を正常化するため、糖尿病動脈硬化を予防する効果が期待できる。

 砂糖は消化・吸収が速い。血糖値を上昇させる上白糖よりも、ミネラル分を多く含む黒糖やキビ糖を選ぶようにしたい。ミネラル分は血糖値の上昇を抑えるだけでなく、腸内の善玉菌を増やす効果もある。腸内環境を整えるオリゴ糖や砂糖を原料に開発された「パラチノース」も、砂糖の5分の1のスピードでゆっくり吸収されるので試してみるとよいだろう。(ソーシャライズ社提供)

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