Dr.純子のメディカルサロン

たばこのイメージ 第3回

 「ヘルスコミュニケーション」で「喫煙とがん」を取り上げましたが、「ハヤミミ」でもたばこを話題にしたいと思います。

 日本ではかつて、たばこは百貨店でお中元やお歳暮などの贈答品として扱われていたそうです。イメージはまったく悪くなかったのですね。むしろ、男らしさや格好良さの象徴とも言え、米国では西部劇のヒーローがたばこの広告に起用されていました。

 私は2008年から10年まで、米ハーバード大公衆衛生大学院の研究室で客員研究員をしていました。研究室の責任者は、全米レベルで禁煙対策を推進するメンバーの一人で、どのようなキャンペーンを展開して喫煙率を下げていったのか、といった話をよく聞きました。

 最優先で着手したのは、「たばこのイメージを変える」ことだったそうです。映画の中の喫煙シーンをなくす、といった地道な働き掛けもその一つで、当初は映画制作会社やたばこメーカーの反対に遭い、相当苦労したようです。

 大きな転換点は、カウボーイ役としてたばこの広告にも出演していた人気俳優が、たばこが原因で呼吸器疾患になり、それをカミングアウトしたことでした。禁煙推進派は、彼が酸素吸入器を付けて馬にまたがるシーンを、テレビCMや新聞広告などで流して喫煙の危険性を訴え、禁煙を促す世論形成に成功したといいます。



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