治療・予防

増える「介護脱毛」
~一部で注目、懸念の声も(広尾プライム皮膚科 谷祐子院長)~

 介護脱毛とは、将来自分が介護を受けるようになる前にアンダーヘアを脱毛しておくこと。大人の排せつ介助は陰部や肛門周辺の毛によって難しくなるケースもあり、一部で注目されているという。広尾プライム皮膚科(東京都渋谷区)の谷祐子院長に話を聞いた。

介護脱毛は利点と不利益考えて

介護脱毛は利点と不利益考えて

 ◇白髪になる前が目安

 介護脱毛の需要が高まっている背景には、そう遠くない将来、自分が介護される姿をイメージして「VIO(ビキニライン、外陰部、肛門周辺)」と呼ばれる局部周辺の体毛を処理しておきたいと考える人が出てきたことがある。また、医療レーザー機器の進化により、脱毛が以前より身近になったことも一因だ。

 同院では、介護脱毛の希望者は圧倒的に女性が多い。「介護する人の負担を少しでも減らしたいと感じる女性が多いからではないか」

 介護脱毛は医学的に必要とされるわけではないが、「アンダーヘアに絡まった排せつ物を取ろうと、こすることで肌が傷つき、炎症を起こして感染症につながるリスクが軽減できます。要介護状態でおむつが必要になっても排せつ後のセルフケアがしやすく衛生的。蒸れやかゆみの予防にもなるのでご自身が快適に過ごせます」。

 介護脱毛を始めるならアンダーヘアが白髪になる前が一つの目安となる。脱毛機器はメラニン色素のない白髪には反応しないためだ。

 ◇施術は医療機関で

 脱毛の範囲について特に決まりはないが、脱毛後は元通りには戻せないため、VIOのどこからどこまで脱毛するか、事前によく考える必要がある。「V(ビキニライン)まで一本残らず脱毛することは必ずしも必要ではありません。将来の介護のためだけでなく、今の生活のメリットも考えるとよいと思います。脱毛によるメリットとデメリットをよく考えることが最も大切です」

 事実、介護脱毛を巡っては、介護負担軽減のためとして強いる雰囲気が生じかねないなど、冷静に受け止めるよう促す声もある。

 デリケートな部位で、脱毛によるトラブルも起き得る。施術は医療機関で受けるのが安心だという。VIOの脱毛はレーザー照射時に痛みが伴うが、肌を冷やすクーリングシステムにより痛みの軽減が期待できるという。脱毛は1カ月半から2カ月に1度のペースで5~6回。VIOを全て脱毛するハイジーナは10回以上必要なこともある。同院の料金の目安は、5回の施術で約7万3000円。

 「不安があれば、まずは皮膚科や婦人科に相談して、信頼できる施設を紹介してもらうのも一案です」と谷院長は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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