治療・予防

いびきに潜むリスク
~自己判断せず早期受診を(千里中央メディカルクリニック 松島勇介院長)~

 睡眠中のいびきは、誰しも多少はかくものだが、症状によっては思わぬ病気が隠れていることがある。特に注意が必要なのが睡眠時無呼吸症候群だ。日本睡眠学会専門医で千里中央メディカルクリニック(大阪府豊中市)の松島勇介院長は「家族らからいびきがひどいと指摘されたり、日中の眠気や集中力の低下、疲労感があるならば放置は禁物です」と話す。

CPAP。鼻にマスクを着け、圧力をかけた空気を送って気道を広げる

CPAP。鼻にマスクを着け、圧力をかけた空気を送って気道を広げる

 ◇無呼吸は危険のサイン

 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上繰り返される状態を指す。非常に大きないびき、呼吸が弱くなる低呼吸、無呼吸という順番で、いびきを繰り返すことが特徴だ。

 低酸素状態が毎晩続くストレスで、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を発症しやすくなる。「このようないびきを放置すると、脳卒中や心筋梗塞など合併症のリスクが高くなりとても危険です」

 また、無呼吸から呼吸が再開する際に起こる脳の覚醒反応によって眠りが浅くなり、睡眠の質は著しく低下する。熟睡できない日が続くと、日中も強い眠気や倦怠(けんたい)感に襲われ、仕事に支障を来したり、眠気により交通事故につながったりするケースも少なくないという。

 発症の原因はさまざまだが、「いびきが大きいと指摘されたことがある」「寝汗をかく」「最近、体重が増えた。または肥満気味である」「顎が小さい、引っ込んでいる」「舌、へんとうが大きい」「鼻が詰まりやすい」かどうかが目安となる。「六つのうち三つ当てはまれば受診を」

 ◇治療で改善

 日本睡眠学会または日本呼吸器学会の専門医がいる医療機関を受診し、睡眠検査を受ける。まずは自宅でできる簡易検査をし、必要な場合は入院して睡眠中の脳波を調べる精密検査を行う。

 治療はCPAP(持続陽圧呼吸療法)、マウスピースの装着、鼻詰まりの改善、口周辺の筋肉を鍛える口腔(こうくう)内機能訓練、生活習慣の改善による減量などが、原因や症状の程度に合わせて行われる。「適切な治療によって睡眠の質が改善されると、昼間の眠気が緩和するといった効果も見られます。脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気の発症リスクを下げるためにも、早めの受診、治療が肝心です」

 睡眠中のいびきは、家族からの指摘で初めて気付く人も多い。「一番大事なのは自分のいびきを知ることです。近年は、スマートフォンで睡眠時のいびきの音を録音できる無料アプリが簡単に手に入ります。このようなツールを活用して、自主的な受診につなげてください」と松島院長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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