治療・予防

「マイクロスリープ」が頻発
~居眠り運転事故の直前1分間(広島大学大学院 塩見利明教授ら)~

 トラック運転者の居眠り運転事故直前に、15秒以内の睡眠「マイクロスリープ」が頻発していることが、広島大学大学院医系科学研究科(広島市)の研究で分かった。睡眠医学寄付講座の塩見利明教授と熊谷元准教授に話を聞いた。

マイクロスリープ

マイクロスリープ

 ◇ドラレコ分析は初めて

 トラックの死傷事故で主な原因の一つとされるのが、居眠り運転による追突・衝突事故だ。塩見教授は「普通自動車と同様、トラックでも衝突被害軽減ブレーキ、車線逸脱抑制装置などの安全支援装置の開発が進んでいますが、居眠り事故防止に至っていないのが実情です」と話す。

 そこで熊谷准教授らが、実際のトラック運転者の居眠り運転事故のドライブレコーダー映像を分析した。

 ◇まず眠気にあらがう行動

 分析したのは、2016年4月から21年3月までにある会社で発生したトラックの居眠り運転事故のうち、車内・車外カメラからドライブレコーダーに録画された、52件の居眠り運転事故直前1分間の動画。運転者の行動と車両の動きを1秒ごとに対比した。

 その結果、52件のうち32件は一般道路で起き、追突事故が多かった。残り20件は高速道路上で、左側の側面衝突事故が多かった。時間帯は大半が夕方、深夜または早朝で、運転者は若年層が多かった。

 「調査した事故全てで、居眠り運転事故直前にマイクロスリープが発生し、多くは数秒間うとうとするといったものでした」

 事故前1分間に発生した、運転者のマイクロスリープに関連した行動と車両の動きも調べた。まず無意識に顔、頭に触るなど、眠気にあらがうような行動(抗眠気行動)が増え、次に眠気が強まると、このような行動が減り、体の動きが停止し、頭部ががくっと下がるなど、マイクロスリープの兆候と考えられる行動が増えた。それに伴い、蛇行や不自然な減速などの車両挙動異常も見られ、追突・衝突に至っていた。

 塩見教授は「原因としては運転者の睡眠不足が強く疑われるが、同時に今回の結果を踏まえ、マイクロスリープの検知法の開発を進め、事故を少なくしていきたい」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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