治療・予防

手に大量の汗
~生活・仕事に支障―手掌多汗症~

 ◇治療法の特徴、保険適用外も

 手のひらを含む原発性局所多汗症で推奨される治療法にはどのようなものがあるのか。塩化アルミニウム外用療法は、塩化アルミニウムが角質内の汗を出す管(汗管)に沈着してふたになる。外用抗コリン薬はアセチルコリンという神経伝達物質がエクリン汗腺の受容体に結合するのを阻害することで、発汗を抑制する。診療ガイドラインで推奨度が高い脇の汗と同様、手のひらについても効果が期待されている。イオントフォレーシスは、水道水の入った容器に多汗症の部位を浸し電流を流すことで発汗を抑制する。

 また、アセチルコリン放出を抑制し、効力や作用時間に優れるA型ボツリヌス菌毒素製剤(注射薬)がある。内服療法として海外の報告例が多いのが抗コリン内服薬で、カナダでは顔面の多汗症に対する第1選択肢とされている。

東京都内で講演する藤本智子院長

東京都内で講演する藤本智子院長

 外科的療法としては、交感神経節を切除したり、焼き切ったりする交感神経遮断術がある。有効率が高く、効果も長期間持続するが、暑い時や運動時に胸や背中などから多くの汗が出る代償性発汗という副作用を伴いやすい。「いわば最後の選択肢」(藤本院長)という位置付けだ。

 藤本院長は「部位によって推奨される治療法は限られており、重症度により治療法の選択も異なる。さらに保険が適用されるものと適用外のものがあるので、副作用も含めて患者に十分説明した上で、不利益にならない治療を選ぶ必要がある」と指摘する。

 ◇利便性高い治療薬

 藤本院長が評価しているのが、手掌性多汗症の治療薬として初めて23年3月に保険適用となったローションタイプの外用抗コリン薬だ。

 50代の男性中学校教師は、緊張した時に手の汗が滴り落ちるほどだった。黒板に文字を書く手に生徒の視線が集まり、緊張する。すると不安になり、さらに汗が出て授業に集中できず悩んでいた。同クリニックを受診した男性にこの外用抗コリン薬を処方したところ、汗の量が半分程度に減少。授業に集中できるようになったという。

 藤本院長は「この薬は1日に1回塗布するだけでよく、患者の満足度は高い。これが治療の第1選択肢になる」と話す。(鈴木豊)

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