治療・予防

冬にも起こる脱水症
~高齢・病弱の人は注意を(済生会横浜市東部病院 谷口英喜医師)~

 脱水症は夏の暑い時期に起こるものと思われがちだが、冬場にも多く発生する。注意すべき状況や対処法について、済生会横浜市東部病院(横浜市)の谷口英喜医師に聞いた。

「冬の脱水」が起こりやすい理由

「冬の脱水」が起こりやすい理由

 ◇じわじわと進む

 人の体は、子どもで体重の70%、成人で60~65%、高齢者で50~55%程度を水分(体液)が占める。体液が何らかの理由で失われ、日常の活動や生命維持活動に障害が生じた状態を「脱水症」と呼ぶ。

 症状はさまざまで、めまいやふらつき、頭痛吐き気、重度では意識障害やけいれんなどが起こる。全身の血流量が減少し、心臓や腎臓などの臓器不全を起こした結果、死に至ることもある。

 脱水症には急性型と慢性型がある。急性型は夏場の熱中症運動による大量の発汗、感染症に伴う下痢嘔吐(おうと)などで健康な人に急に起こることが多い。

 一方、慢性型は水分補給や食事の摂取不足が原因でじわじわと起こる。「冬場は空気が乾燥した環境に加え、水分摂取量が減ったり食欲が低下したりし、高齢者や病弱な人に慢性型の脱水症が起こりやすい」と谷口医師は説明する。

 また、冬場はノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎が増える。発症すると、下痢嘔吐で体液と共にナトリウムやカリウムなどの電解質が失われ、脱水症につながりやすい。

 水分と共に、電解質の適度な補給が必要。「水やお茶を大量に取ると体液が薄まり電解質濃度がさらに下がります。体は濃度を元に戻そうと尿量を増やして水分を排出しようとします。そのため、さらに脱水症が進む悪循環に陥ることがあります」。ナトリウムやカリウムを含む市販の経口補水液を常備しておくとよい。

 運動不足も原因に

 新型コロナウイルス下の冬は、健康な人も脱水症に気を付けた方がよい。「筋肉は水分をためる機能がありますが、寒さやリモートワークなどの影響で運動不足になり筋肉量が低下すると、脱水症になりやすい。また、マスク着用で喉の渇きに気付きにくく、水分補給を忘れがちになります」

 室内での運動やウオーキングなどで運動不足の解消を図る。喉の渇きを感じなくても、決まった時間に定期的に水分補給を心掛けることも重要だ。また、室内が乾燥すると脱水を招きやすいので加湿器などで適度な湿度を保つことも忘れずに。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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