ピルの副作用について|うつ・太る・吐き気など気になるリスクは?

ピルの副作用について|うつ・太る・吐き気など気になるリスクは?

2023年7月1日

Pillクリニック新宿 院長 宮本 亜希子 先生

監修医師 宮本 亜希子(みやもと あきこ)

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日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 兵庫医科大学卒。 産婦人科専門医として保険診療と自由診療の両面から女性が人生のQOLを高められる治療に尽力。 専門は産婦人科全般で、周産期、婦人科美容、アンチエイジング、性教育などあらゆる世代の女性の悩みに寄り添う。3児の母でもあり、自身の経験を生かし、診療やメディア活動にも勤しんでいる。

ピルは、避妊効果があるだけでなく、生理痛や生理不順の改善、肌荒れやニキビの改善などの効果が期待できます。しかしピルには「副作用が多い」というイメージもあり、使用をためらっている人も多いのではないでしょうか。この記事では、ピルの副作用について徹底的に解説していきます。副作用が気になり不安に思っている方はぜひ参考にしてください。

ピルとは2種類の女性ホルモンを含んだ合成ホルモン剤のこと

ピルとは

そもそも「ピル」とはどんな薬なのでしょうか。

ピルは、2種類の女性ホルモン成分を含んだ合成ホルモン剤のことです。2種類の女性ホルモンとは、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」「プロゲストーゲン(黄体ホルモン)」のことを指します。どちらも女性の生理周期の制御において不可欠なホルモンです。

ピルのなかで最もよく使われるのは、低用量ピルです。この「低用量」というのは、含まれるエストロゲンの量が少ないことを表しています。低用量ピルは、エストロゲンを最小限の量に抑えることで、副作用を抑えたピルであると言えます。

低用量ピルの効果は?

低用量ピルの主な効果

低用量ピルにはどのような効果があるのでしょうか。まず初めに思い浮かぶのは「避妊」という方も少なくないと思いますが、実は他にもさまざまな効果があります。ここでは、低用量ピルの多様な効果について説明します。

正しい服用で約99%避妊できる

まずは、最も重要な効果である避妊について説明します。

生理的な条件では、排卵された卵子が、性交で膣から入ってきた精子と出会うことで受精し、妊娠に至ります。ピルは排卵を抑制することで、卵子と精子が出会うことを妨げ、避妊効果を示します。

ピルは、正しい服用方法を守れば約99%の確率で避妊できるとされています。この数字は、他の避妊方法(コンドームなど)と比べても高く、低用量ピルが優れた避妊方法であることを表しています。

ただし、注意しなければならないのは、この数字は「正しく」服用された場合の数字であるという点です。言い換えると、間違った方法で服用してしまった場合には、避妊が失敗しやすくなるかもしれないということになります。ですので、とくに避妊目的で低用量ピルを用いる場合は、医師の指示をよく聞き、従うようにしましょう。

生理周期の安定

低用量ピルは、生理周期が安定します。

不安定な生理周期はホルモンバランスの乱れによるものが多く、ピルに含まれるホルモン剤の成分により月経を起こすので、月経周期を安定させることも期待できます。

ニキビや肌荒れを改善する

女性のニキビや肌荒れは、ホルモンバランスの乱れによるものが多いです。というのも、エストロゲンやプロゲストーゲンは女性の皮膚の環境にも影響するからです。これらのホルモンの変化が皮膚環境の悪化を招き、ニキビや肌荒れの原因となります。

低用量ピルの服用は、これらのホルモンの濃度の変化を安定させる効果があります。そのため、ニキビや肌荒れの改善を目的に使われることもあります。

生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和

低用量ピルは、生理痛やPMSの緩和にも有効です。ピルは子宮内膜の増殖を抑える働きがあります。月経痛は子宮内膜でつくられるプロスタグランジンという物質が関与しています。子宮内膜が厚くならないと、このプロスタグランジンの産生も減るため、生理痛に効果的です。また、月経前の急激なプロゲステロンの状況も抑えるためPMSなどにも有効です。

ただし、生理痛があまりにひどい場合は、子宮内膜症や子宮腺筋症などの疾患が隠れている可能性があるため、医師の診察を受けるようにしましょう。

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ピルの副作用は?

ピルの副作用

ピルにはさまざまな効果があることが分かりましたね。しかし、「副作用が怖い」という意見もよく耳にします。では、ピルを服用すると、どのような副作用が起こりうるのでしょうか。

吐き気・乳房の張りなど

ピルを服用すると生じる副作用としてよく知られているのは、吐き気です。また、乳房の張りが感じられることがあります。これらの副作用は服用を続けているうちに軽くなることが多いので、基本的には無視して服用を続けて構いません。しかし、あまりに症状が重く、生活に支障をきたす場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。

むくみ・食欲増進

むくみや食欲増進もピルの副作用として知られています。これらにより体重が増えて太ってしまうのは避けたいですね。

ピルのむくみについては、普通のむくみと同様に塩分摂取や飲酒の制限、運動などで予防、改善することができます。運動は、食欲増進による食べ過ぎで付いてしまった脂肪を落とすことにも効果的です。

約20%の人に不正出血がある

不正出血とは不正性器出血ともいい、月経以外で性器から出血があることを指します。ピルを服用した人のうち約20%に不正出血が認められることがあります。

ピルによる月経(消退出血)は、通常は休薬期間(ピルを飲むのを中断する期間)や偽薬期間(ホルモンの入っていない薬を飲む期間)に起こります。それ以外の期間に出血があれば不正出血となります。これらについては処方した医師からの説明をよく聞きましょう。また、不正出血が起きた場合には、医師の診察を受けるようにしましょう。

これは副作用とは直接の関係はありませんが、ピルを飲み忘れた場合にも不正出血が起きる場合があります。この場合も、飲み忘れたことを医師に伝えて指示を仰ぐようにしましょう。

ピルを飲んでいて不正出血が起きた場合は医師へ相談しましょう。

強い眠気を感じたり気分が落ち込むことがある

ピルを服用していると、強い眠気を感じたり気分が落ち込んだりすること(抑うつ気分)があります。これらの副作用も、服用を続けていれば軽くなるため、基本的には服用を継続してかまいません。ただし、症状が重い場合は他の疾患が背景にある可能性もあります。不安であればクリニックなどを受診しましょう。

子宮頸がんの発生リスクが高まる

ピルを服用することにより、子宮頸がんのリスクが高まるとされています。しかし、ピルを服用しなかった場合と比べてこれらのリスクの差はごくわずかです。

ただし、子宮頸がんの発生リスクが高まるのは、ピルの成分によるものではありません。

子宮頚がんは性行為で感染するヒトパピローマウイルスが原因でなることがほとんどですが、ピルを飲むとその避妊効果の高さから、コンドームをしなくなる人が増え、感染してしまう機会が増えます。

避妊効果が高いピルを内服していても、感染症を防ぐためにはコンドームを使用しましょう。

乳がんや子宮頸がんなどの発症リスクを増加させる可能性があるとされるが、日本人において十分なデータはない

有山智博, et al. 我が国における低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤による有害事象報告と医薬品副作用被害救済制度給付決定情報の調査解析. 医療薬学, 2019, 45.2: 115-124.

定期的に検診を受けるようにすれば問題無いでしょう。

血栓症のリスクが微増する

ピルの服用により血栓症のリスクが微増することが知られています。

ただし、もともと血栓症のリスクがある人(肥満、喫煙者、40歳以上の方など)は、ピルを服用するべきではない場合もあります。医師の判断に従いましょう。

服用から3ヶ月以上経っても副作用が治まらない場合は医師に相談を

ピルの副作用が収まる時期

ピルの副作用は服用を始めて間もない期間に起こりやすく、服用を継続していると3ヶ月以内に改善することがほとんどであるため、原則として服用を中止する必要はありません。ただし、服用から3ヶ月以上経っても副作用が治まらない場合は異常と考えるべきです。医師に相談するようにしましょう。

また、1シートでもやめると飲みはじめの状態に戻ってしまいます。ピルを飲んだりやめたりされる方がいますが、それをするとはじめの副作用の出やすい期間を何度もすることになるのでやめましょう。

ピルに関するよくある質問

ここでは、ピルに関してよく寄せられる質問に答えました。

ピルのメリットとデメリットは?

ピルの最大のメリットはなんといっても高い避妊効果でしょう。低用量ピルは、正しく服用することで99%以上の避妊効果を発揮する薬です。他にも生理痛の改善やPMSの軽減など、女性にとってメリットの大きい働きが期待できます。

しかしデメリットとして、低用量ピルには少なからず頭痛や吐き気などの副作用や血栓症のリスクが伴う場合もあります。

ピルを飲むと生理はどうなる?

ピルを飲むと生理が止まると考えている人も多いそうですが、実際には生理は止まりません。ただし、ピルには子宮内膜を厚くさせにくくする効果があります。このことにより、月経時の経血量が減ることが期待できます。

ピルを飲むと太る?

ピルはむくみや食欲増加を引き起こすことがあり、結果的に太ってしまうことも考えられます。

しかし、対策をすれば予防可能です。ピルを服用している際は、生活習慣にとくに気を使うようにしましょう。

ピルは何年飲んでも大丈夫?

ピルは基本的に閉経するまで飲み続けることができます。ただし副作用などのリスクを最小限に抑えるため、定期的に検診を受けるようにしましょう。50歳以上は禁忌となります。

ピルを飲むといつから妊娠しない?

生理初日からピルを飲み始めた場合は、1シート目の1日目から避妊できます。

ピルを飲んでいればコンドームは不要?

ピルには高い避妊効果がありますが、確実に避妊を成功させたい場合は、コンドームも使うことをおすすめします。二つの避妊方法を同時に行うことにより避妊成功率を押し上げることができます。

さらに、ピルには性病予防効果がありませんが、コンドームには性病を予防する効果があります。これらも踏まえると、ピルとコンドームはどちらも使うべきであると言えます。

将来的に妊娠しづらくなる?

ピルの服用をやめれば排卵が起きて妊娠可能になります。そのため、ピルを服用することにより将来的に妊娠しづらくなるということはありません。

まとめ

ピルの副作用まとめ

・ピルは約99%の確率で避妊できる
・避妊以外に、生理周期の安定、肌トラブルの改善、生理痛や月経前症候群の改善にも用いられる
・吐き気や抑うつなどの副作用は服用を続ければ消えることがほとんどで、3ヶ月しても消えない場合は医師に相談する
・感染症予防のためにピルのみならずコンドームも併用するべき
・ピル服用で将来的に妊娠しづらくなることはない

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この記事の監修医師

Pillクリニック新宿 院長 宮本 亜希子 先生

監修医師 宮本 亜希子(みやもと あきこ)

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日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 兵庫医科大学卒。 産婦人科専門医として保険診療と自由診療の両面から女性が人生のQOLを高められる治療に尽力。 専門は産婦人科全般で、周産期、婦人科美容、アンチエイジング、性教育などあらゆる世代の女性の悩みに寄り添う。3児の母でもあり、自身の経験を生かし、診療やメディア活動にも勤しんでいる。
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伊藤 真実(Ito Mami)

伊藤 真実(Ito Mami)

健康・医療・美容ジャンルを得意とするライター。自ら施術やカウンセリングを受けて比較検証。さらに、専門的な知識を持つ医師への取材を重ね、信頼性の高いコンテンツ作りを心掛けている。