一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(最終回)他人の幸せも考えよう=40代で武道道場へ

 ◇中学生にも教え請う

 学生時代に、俳優ブルース・リー主演の映画を観て興奮した。ブルース・リーは代表作の「燃えよドラゴン」で少林寺の拳士の役で登場しただけでなく、格闘技「截拳道(ジークンドー)」の創始者でもあった。彼に憧れていたこともあって、少林寺拳法を始めたという。週2回、道場に通う。経験者が多い中、全くの初心者が四十の手習いで始めるのは、なかなか勇気が要ることではないだろうか。

 「最初は体験練習で行きました。緊張しましたが、たくさん汗をかいて気持ちが良かった。すぐに入門を決めました」

 初心者クラスにいた時、周りは少年ばかり。その中に1人混じっての練習だったという。

 「少林寺拳法はやったことがなかった。だから、相手が中学生でも教えてもらいましたよ。自分も中学生になったみたいで、楽しかったですね」

 石部氏らしくコツコツと練習を重ねた結果、今では四段の腕前になった。手術を待つ患者のために、少しでも長く手術を続けていきたい。そのための体力づくりにもなっている。

 ◇意欲ある若手に期待

 しかし、いずれはメスを置く日は訪れる。先々のことを考え、クリニックで修行を積む若手医師を常に募集している。

 「たくさんの手術が経験できるので、意欲のある30~40代の医師にぜひ来ていただきたい。現在の副院長は50代で2年前から働いてくれていますが、年間200~300例は手術しています。整形外科専門医の資格を取った上で、さらに自分の専門を何にするか迷っている人には、選択肢の一つとして考えてほしいですね」

 人工股関節手術が必要となる病気は整形外科の病気の1%以下にすぎない。限られた分野の仕事でも、その道でコツコツ努力を積み重ねてエキスパートになれば、患者の人生を変えるほどの大きな存在になれるのだ。

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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