人工股関節手術の第一人者―石部基実氏|一流に学ぶ
患者からの厚い信頼
股関節の痛みに苦しんでいる人は推計500万人に上る。股関節は人体で最も大きな関節であり、上半身と下半身をつなぐ要の役割を果たす。そこが痛くなると、普通に歩くことも苦痛になり、次第に外出がおっくうになって家にこもりがちになる。医療機関を受診しても、適切な治療を受けられないまま、痛みに耐えて暮らす人が多いのが現状だ。人工股関節手術の第一人者である石部基実氏(59歳)の下には、国内各地だけでなく海外からも股関節の痛みを抱えた患者が殺到する。悪くなった股関節をチタン製の人工股関節に交換すると、すぐに長年の痛みから解放される。傷が小さく負担の少ない手術法を採用することで、入院期間も10日程度と短い。手術を受けた多くの患者がクリニックのホームページに自らの写真とメールアドレスを公開して体験を語るなど、高い満足度を得ている。
欧米式のユニークな開業スタイルにも注目が集まる。人工股関節手術に特化したクリニックでありながら、手術室も入院設備もない。クリニックでは術前、術後の診察だけを行い、提携する病院に石部氏とクリニックの看護師が出かけていって手術を行い、患者はその病院に入院する。回診も石部氏が自ら行う。人工股関節手術だけで昨年1年間で642件と国内有数の実績を持つ。その成功の秘訣(ひけつ)はどこにあるのか、札幌市の大通り公園近くのビル10階にあるクリニックに石部氏を訪ねた。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
石部基実(いしべ・もとみ)
1957年10月、東京都生まれ。1982年、北海道大医学部卒。同大整形外科に入局、1989年、米ロチェスター大留学、1994年、NTT札幌病院整形外科(現・NTT東日本札幌病院)医長、2006年、同院人工関節センター長。2008年3月、人工股関節手術を専門とする石部基実クリニック(札幌市)を開業。人工股関節手術だけで年間600件以上と国内有数の症例数を持つ。