下痢、異常便 家庭の医学

 熱も痛みもなく元気な人がたまに1日に2?3回、食後に下痢をする場合は、あまり心配はありません。下痢のもっとも多い原因は、急性胃炎あるいは急性腸炎です。肛門(こうもん)に近い腸の炎症ほど、下痢便を出します。
 食中毒でも下痢が起こります。最近では多くありませんが、赤痢では粘血便のひどい下痢がみられ、腹がゴロゴロ鳴り、腹痛を伴います。コレラでは、ひどい水様下痢をします。
 潰瘍性大腸炎では、粘血便性の下痢をくり返し、体力を消耗します。このような慢性の下痢を起こす病気や大腸がんでは、便秘と下痢を交互にくり返すこともあります。膵(すい)臓の病気では、脂が浮いてくるような脂肪性下痢を起こします。急性肝炎や食物アレルギーでも、下痢を起こすことがあります。
 便に赤い血液がまじれば、肛門の病気、まずは痔(じ)を考えますが、くり返し続くときや量の多いときは直腸がんの疑いがあります。黒いタール便は、上部消化管(食道~胃・十二指腸)に相当量の出血があったことを示します。食道静脈瘤(りゅう)、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどが考えられます。

■下痢、異常便
症状病名そのほかの症状など
急性の下痢急性腸炎吐き気・嘔吐、腹痛
食中毒腹痛、嘔吐
赤痢下腹部痛、粘血便、吐き気・嘔吐
コレラ吐き気、水様便
急性乳児下痢症嘔吐、全身のけいれん
慢性の下痢潰瘍性大腸炎腹痛、粘血便、発熱、食欲不振、やせ
過敏性腸症候群下痢と便秘のくり返し、腹痛、ストレス
腸結核腹痛、微熱、やせ
膵臓の病気腹痛、脂肪便、腰の痛み
急性肝炎食欲不振、黄疸、吐き気、全身倦怠感
食物アレルギー腹痛
血便大腸がん食欲不振、やせ、左・右下腹部のしこり、便秘
痔など肛門の病気局所のはれ、痛み
食道静脈瘤食欲不振、黄疸
胃・十二指腸潰瘍食欲不振、上腹部痛、胸やけ、吐き気・嘔吐、吐血、黒色便
胃がん食欲不振、体重減少、吐血、吐き気・嘔吐、黒色便、胸やけ


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹