安産のために 家庭の医学

 お産のしくみを十分理解し、おちついて怖がらずにお産に臨むことが大切です。第2期(娩出期)の終わりまでの長い時間、いきむ必要がある時期まではリラックスして力とスタミナをセーブする必要があります。深呼吸やマッサージなどの補助動作を母親学級などで妊娠中から十分練習しておくとよいでしょう。

■立ちあい分娩
 夫婦がいっしょにお産の陣痛経過を共有して赤ちゃんの誕生に立ちあうことはたいへん意義のあることです。妊娠中から夫婦で講義を受け、呼吸法や補助動作をいっしょに勉強していきます。実際、腰のマッサージや指圧などは夫に上手におこなってもらうと、とても楽になります。

■補助動作
 第1期(開口期)の補助動作は、力を抜いてリラックスすることに重点がおかれます。

□腹式呼吸
 仰向けに寝て軽くひざを立て、両手を下腹に当てます。全身の力をすっかり抜いて、一度息を吐いたあとに自然に下腹がふくらむように大きく息を吸い込みゆっくり吐き出します。深呼吸の速さは1分間に約10回です。吸う息が3秒、吐く息が3秒で、10回くり返すと1分間になります。「スー、ハー」とゆっくりやってみましょう。第1期では子宮の収縮が始まったら腹式呼吸を始め、終わるまで続けます。

□マッサージ
 分娩(ぶんべん)第1期のなかばから陣痛が強くなったころ、腹式呼吸に付け加えます。
 両手の親指をおへそのところであわせ、下腹に三角形をつくるように両手を置きます。
 一つは、息を吸いながら両手を左右に水平にずらし、息を吐きながら戻します(水平マッサージ)。もう一つの方法は、息を吸いながら左右の下腹、わき腹、上腹部へと半円を描き、次に息を吐きながら両手をそろえて上腹部から中央を通ってもとの位置に戻します(輪状マッサージ)。
 いずれも陣痛が始まったら腹式呼吸とともに軽く腹部をなでるようにしてマッサージをおこないます。


□圧迫法
 腰骨の内側を側面からつかみ、息を吐きながら親指でぐっと押し、息を吸いながらゆるめます。第1期のなかばごろから腰のほうに痛みを強く感じるようになります。にぎりこぶしを腰骨のうしろに置いて、腹式呼吸をくり返しながらこぶしで圧迫すると楽になります。夫や付き添いの人に手伝ってもらうとよいでしょう。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子
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