現行の健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化する時期を巡り、政府内で綱引きが続いている。2024年秋の廃止期限延長も視野に入れる首相官邸に対し、厚生労働省は慎重な構えだ。岸田文雄首相は、保険証の代わりに発行する「資格確認書」の有効期限を見直す案も含め検討。近く記者会見して結果を説明する。
 首相は1日の政府・与党連絡会議で、マイナンバー制度を巡る混乱の収束に向け、「現場の声や意見を大切にし、政府の対応を丁寧に検討していく」と述べた。
 自民党内の延期論なども踏まえ、官邸サイドは当初、首相が今週中に新たな方針を表明する段取りを描いていた。ただ、政府内の意見集約は難航。8日にも取りまとめるマイナンバー制度に関する総点検の中間報告に合わせ、首相の会見もずれ込むとの観測が強まっている。
 官邸内で有力視される廃止時期の先送りは、6月に改正したマイナンバー法の再改正が必要。その場合、今秋にも召集される臨時国会で野党の追及は必至で、厚労省内からは懸念が漏れる。公明党の山口那津男代表も1日、記者団に「延期を今決める理由が全く分からない。国民の不安を払拭する措置の説明が先だ」と疑問を呈した。
 厚労省内では廃止時期を維持する一方、資格確認書の有効期限1年を見直し、一律に定めない案が出ている。利便性を高める狙いだが、官邸関係者は「どうすれば移行してもらえるかが大事なのに、それでは現在の保険証と何が変わるのか」と難色を示す。
 政府方針が定まらない状況を受け、自民党の世耕弘成参院幹事長は1日の記者会見で「首相や官邸がリーダーシップを発揮して事態収拾を図るべきだ」と求めた。 (C)時事通信社