現行の健康保険証を2024年秋に原則廃止し、マイナンバーカードと一本化する政府方針を巡り、自民党幹部から期限を延期すべきだとの声が出てきた。政府はまずは予定通りの実施に向けて国民の不安解消に努める考えだが、延期論が強まれば早期に軌道修正を迫られる可能性がある。
 自民党の世耕弘成参院幹事長は25日の記者会見で「国民の信頼が何より重要だ」と強調し、政府に説明の徹底と対策の着実な実施を要請。その上で「それでもなお信頼回復につながらないなら、必ずしも来年秋の期限にこだわる必要はない。信頼を優先すべきだ」と主張した。
 萩生田光一政調会長も24日、熊本県合志市で記者団に「無理に時間を切らず、皆さんに理解してもらう機会をつくる必要がある」と語った。
 岸田文雄首相は6月の記者会見で、保険証廃止について「国民の不安払拭措置の完了が大前提だ」と述べ、理解を得られなければ期限にこだわらない姿勢をにじませた。政府は猶予期間として発行済み保険証を使える25年秋まで「丁寧な説明」を続けるとしている。
 公明党の山口那津男代表は25日、首相と首相官邸で会談し、「これからの方針を国民に分かりやすく説明してほしい」と注文。首相は「最大限努力したい」と応じた。この後、山口氏は期限延期の必要性を記者団に問われ、「まず説明責任を尽くすことが大事だ」と述べるにとどめた。
 マイナ問題を巡っては、26日に参院の特別委員会で閉会中審査が行われる。野党は所管の河野太郎デジタル相らを徹底追及する方針だ。立憲民主党の長妻昭政調会長は25日の野党会合で「やっと政権中枢からも来年秋の廃止ありきを変えようという発言が出てきた」と述べ、期限見直し要求を強める考えを示した。 (C)時事通信社