中国・Central South UniversityのHaoyi Weng氏らは、同国の静脈血栓塞栓症(VTE)患者のデータとバイオバンク・ジャパン(BBJ)に登録された日本人の血清尿酸値(SUA)データを用い、傾向スコアマッチングによるコホート研究とメンデルランダム化(MR)解析を行って東アジア人集団における高尿酸血症とVTE再発リスクの関連を検討。その結果、健康な一般集団と比べてVTE患者ではSUAが有意に高く、SUAとVTE再発リスクとの間に因果関係が示されたとLancet Reg Health West Pac2023; 39: 100848)に発表した。

SUA 325mmol/L以上でVTE再発リスク上昇

 欧州人集団ではSUA高値がVTE再発リスク上昇に関連することが示されているが、SUAとVTEの因果関係は証明されていない。また、東アジア人集団では高尿酸血症の有病率が高いにもかかわらず、SUAとVTEの関連を検討した大規模研究はない。

 そこでWeng氏らは、中国の肺血栓塞栓症の登録研究China Pulmonary Thromboembolism Registry Study(CURES)からVTE患者3,754例を抽出。同国の45歳以上の中高年者を対象にした縦断研究China Health and Retirement Longitudinal Survey(CHARLS)から、健康な対照群1万477例を抽出した。

 解析の結果、VTE患者群では対照群と比べてSUAが有意に高かった(325.03mmol/L vs. 294.42mmol/L、P<0.001)。

 これらのデータから1:1の傾向スコアマッチングを用いて選出したVTE患者群と対照群(各群2,751例)の解析でも、同様にVTE患者群でSUAが有意に高かった(317.95mmol/L vs. 295.75mmol/L、P<0.001)。

 三次スプライン解析では、SUA 325mmol/L以上でSUA上昇に伴うVTE再発リスク上昇が確認された(P=0.0001)。

2サンプルMR解析で因果関係を確認

 さらに、①BBJに登録された日本人10万9,029例のSUAゲノムワイド関連解析(GWAS)データ(BBJ_UA)、②日本人12万1,745例のSUA GWASメタ解析データ(META_UA)、③中国のVTE患者1,268例と健康対照群1万7,663例のVTE GWASデータを用い、2サンプルMR解析を行った。

 逆分散加重法(IVW)による単変量MR解析では、BBJ_UAでβ=0.17(95%CI 0.05~0.29、P=0.0079)、META_UAでβ=0.14(同0.01~0.27、P=0.025)と、いずれのデータセットでもSUAとVTEの間に正の相関関係が示された。

 また、多変量残差回帰によるMR解析ではBBJ_UAでβ=0.21(95%CI 0.09~0.33、P=0.0006)、META_UAでβ=0.20(同0.08~0.32、P=0.0012)、多変量IVWによるMR解析ではBBJ_UAでβ=0.18(同0.05~0.31、P=0.0068)、META_UAでβ=0.15(同0.02~0.28、P=0.02)となり、いずれもSUAとVTEの間に正の相関関係が示された。

 以上の結果から、Weng氏らは「東アジア人集団において、SUAとVTEの間に正の相関関係があり、SUAはVTE発症の独立予測因子であることが示唆された」と結論。「今回の知見は、VTE予防におけるSUAモニタリングの重要性を裏付けるものであり、アジア太平洋地域において高尿酸血症が増えつつあることに鑑み、公衆衛生対策が急務であることを示すものだ」と付言している。

(太田敦子)