探索的研究では、Ca拮抗薬使用と緑内障との関連が報告されているが、重要な交絡因子の調整がされていない可能性がある。英・University College London Institute of OphthalmologyのAlan Kastner氏らは、UKバイオバンクに登録した42万例超のデータを用いて、Ca拮抗薬の使用と緑内障との関連を検討する集団ベースの横断研究を実施。その結果、Ca拮抗薬の使用は緑内障の発症および網膜内層の菲薄化と関連していたとJAMA Ophthalmol2023年9月7日オンライン版)に報告した。

網膜内層厚や眼圧との関連も検討

 対象は、2006~10年のUKバイオバンク登録者のうち、緑内障の病型、眼圧、光干渉断層計(OCT)検査による網膜内層厚のデータがそろっている者。Ca拮抗薬の使用については、登録時にタッチスクリーンによる質問票で評価し、専門の看護師が面接で再確認した。

 主要評価項目は、緑内障の病型、角膜の性状で補正した眼圧(IOPcc)、OCT検査による網膜内層厚2種〔黄斑網膜神経線維層(mRNFL)厚および黄斑神経節細胞内網状層(mGCIPL)厚〕とした。解析には、ロジスティック回帰分析と線形回帰分析を用いた。

緑内障発症のオッズ比1.4、眼圧とは関連せず

 各評価項目に関して完全データがそろっていたのは、緑内障病型が42万7,480例、眼圧が9万7,100例、OCTによる網膜内層厚が4万1,023例。42万7,480例(年齢中央値58歳、女性54.1%、白人94.8%、高血圧既往あり26.7%)を解析に組み入れた。Ca拮抗薬使用者は3万3,175例(全体の7.8%)で、そのうち2万9,314例がジヒドロピリジン系薬を使用していた。

 年齢、性、自己申告の人種および民族、タウンゼンド剝奪指標、糖尿病の既往、BMI、総コレステロール、喫煙状況、飲酒状況で調整後の解析で、Ca拮抗薬の使用と緑内障の発症は有意に関連していた〔オッズ比(OR) 1.39、95%CI 1.14~1.69、P=0.001〕。一方、利尿薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、β遮断薬の使用との関連は認められなかった。

 また、Ca拮抗薬使用は、mRNFL(-0.16μm、95%CI -0.30~-0.02μm、P=0.03)およびmGCIPL(-0.34μm、95%CI -0.54~-0.15μm、P=0.001)の菲薄化と有意に関連していた。

 一方で、眼圧(-0.01mmHg、95%CI -0.09~0.07mmHg、P=0.84)との有意な関連は認められなかった。眼圧降下薬の非使用者に限定した解析でも、結果は同様だった。

 一連のCa拮抗薬使用と緑内障との関連に、性、人種/民族による差は認められなかった。

緑内障治療後も症状進行の場合はCa拮抗薬の変更や中止も考慮

 Kastner氏らは「大規模集団ベースの横断研究において、Ca拮抗薬使用と緑内障との関連が示された。また、Ca拮抗薬の使用がmGCIPLおよびmRNFLの菲薄化と関連していたことも、緑内障との関連を裏付けるものである」と結論。

 さらに「Ca拮抗薬使用と眼圧には関連がなかったことから、緑内障の神経変性には眼圧非依存性の機序が関与している可能性が示唆された。因果関係は確立されていないが、治療にもかかわらず緑内障が進行する場合、Ca拮抗薬の変更または中止を考慮すべきかもしれない」と考察している。

(小路浩史)