政府が新型コロナウイルス対策のため2021年度に支出するなどした予備費計約9兆4000億円の執行状況を会計検査院が調べたところ、年度をまたいだ繰り越しや、関連事業への流用があったことが15日分かった。厚生労働省は新型コロナワクチン経費としていた約1328億円を治療薬の確保に充てていた。
 検査院は、予備費の執行状況を公表し、多額の繰り越しが生じたり、想定とは異なる目的に使ったりした場合は理由を丁寧に説明するよう政府に求めた。
 政府は20、21両年度のコロナ対策予備費として計14兆6500億円を計上した。予備費は国会審議を経ずに政府の判断で使用できるため、当初から目的外使用などを懸念する声が上がっていた。
 今回の検査対象は20年度予備費の繰り越し分4兆7964億円と、21年度の予備費4兆6185億円の計9兆4149億円。その結果、計58事業のうち18事業で、本来は年度内に執行すべき予備費を全額翌年度に繰り越していた。
 低所得子育て世帯への給付金支給事業など内閣府と厚労省の4事業では、年度をまたぐ日程で要求額を算出していた。内閣府と厚労省は「年度内に事業が完了すると想定していた」などと釈明したが、検査院は「短期間でどのように完了すると想定していたのか判然としない」としている。
 また、厚労省はワクチン接種体制の確保など5事業で、治療薬の購入など当初の想定とは異なる事業に予備費相当額を使っていた。同省は「感染拡大防止を目的とした事業であり、目的の範囲内だ」と説明しているという。 (C)時事通信社