昨年末に始まったインフルエンザの流行が夏になっても続き、拡大している。例年は冬に流行し春には収束するが、シーズンをまたぐ異例の事態となっている。新型コロナウイルス下の行動制限で罹患(りかん)せず免疫が低下したところに、国際的な人の往来が増えたことが重なったためだ。新学期早々、各地で休校などが相次ぐ。今後は患者数が例年より増える恐れもあり、専門家らは警戒を強める。
 厚生労働省はインフルエンザについて、全国約5000カ所の定点医療機関から報告された患者数を集計し、1週間で1機関当たり「1人」を超えれば流行と判断している。2020年1月に新型コロナ感染者が初確認されて以降は感染対策の徹底もあり、目立った流行はなかった。
 昨シーズン(昨年秋~今年夏)は、22年12月下旬に1人を超え、3年ぶりに流行入りした。今年2月の「12.91人」を境に減り5月以降は1人台で推移したが、最終週(8月28~9月3日)は「2.56人」に増え、今シーズンの第1週(9月4~10日)は「4.48人」に達した。
 流行が新シーズンまで続くのは、現行の集計方法となった1999年以降、初めての事態。42都道府県で「1人」を超えて流行しており、最多が沖縄(13.43人)で、長崎(8.80人)、千葉(8.58人)と続く。学校など10施設が休校し、学年閉鎖が156施設、学級閉鎖は627施設に上る。
 東京医科大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「流行が長期間なく、人々の免疫が大きく低下した。マスク着用といった感染対策が緩和され、水際対策の撤廃で国際的な人の往来が増加したことも大きな要因」と指摘。日本では毎シーズン推計1000万~1500万人程度の患者が出るが、海外の状況から考えると今シーズンはこれを上回る可能性もあるという。
 浜田氏は「今の感染拡大は学校が新学期を迎えたことが大きい。1機関当たり10人を超える本格的な流行は例年より早い11月ごろに始まる恐れもある」とした上で「拡大が続く新型コロナと同様、高齢者や基礎疾患がある人らはワクチン接種を受けるなどの対策を取ってほしい」と話している。 (C)時事通信社