新型コロナウイルスワクチンの実用化に貢献したハンガリー・セゲド大のカタリン・カリコ教授(68)。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まったが、これまでの道のりは順風満帆とは言えないものだった。
 カリコさんはハンガリー東部のソルノク出身。地元のセゲド大に進み、ハンガリー科学アカデミーの施設でリボ核酸(RNA)の研究を始めたが、経済の悪化で研究費が打ち切られた。
 既に結婚していたカリコさんは1985年7月、米国に活路を求め、夫と当時2歳だった長女とともに渡米。当時は外貨の持ち出しが制限されていたことから、長女のクマのぬいぐるみに両替した外貨を隠して出国したという。
 米テンプル大に88年まで所属したが、目立った成果を残すことができず、89年にペンシルベニア大へ。そこで出会ったドリュー・ワイスマン博士とメッセンジャーRNA(mRNA)の研究を進め、今回の授賞理由となる発見に至った。この時、渡米から20年がたっていた。
 その後、カリコさんは独バイオ医薬品企業ビオンテックの上級副社長に就任。有り金をしのばせたぬいぐるみの持ち主だった長女はボート選手となり、北京、ロンドン五輪で金メダルを獲得した。
 カリコさんは2020年12月、製品化したばかりのファイザー製新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた。自身の研究によって実現したワクチンに「私は基礎研究者だが、常に患者を救うために何かをしたいと思っている」とコメントした。 (C)時事通信社