遺伝的に異なる細胞がモザイク状に混在する「キメラ」のサルを誕生させたと、中国科学院神経科学研究所などの研究チームが9日付の米科学誌セルに発表した。遺伝子の働きを調べる実験でよく作られるキメラマウスの場合と同様に、さまざまな細胞に変わるサルの胚性幹細胞(ES細胞)を別のサル個体の胚に注入し、仮親の母胎に移植する方法で生み出した。
 キメラのサルは米オレゴン国立霊長類研究センターの研究チームが2012年に初めて誕生させたと発表したが、初期の胚を3~6個合体させてから仮親の母胎に移植する方法だった。キメラマウスと同様の方法では初めてで、人に近いサルで遺伝子異常による病気の原因を解明するのに役立つという。
 今回誕生したのはカニクイザルのキメラ。6匹生まれ、このうち雄の1匹の全身の大半がキメラ状態だった。
 21年には、米ソーク研究所と中国の昆明理工大の研究チームが人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)をカニクイザルの胚に注入し、実験容器内で人とサルの細胞が混在したキメラ胚を生み出したと発表した。ブタの体内で人への移植用臓器を作る技術を向上させるのが目的で、実験後に培養を打ち切ったという。 (C)時事通信社