難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者から依頼を受け、薬物を投与して患者を殺害するなどしたとして、嘱託殺人と殺人の罪に問われた医師大久保愉一被告(45)の裁判員裁判の判決が5日、京都地裁であった。川上宏裁判長は「社会的相当性は到底認められない」として弁護側の無罪主張を退け、懲役18年(求刑懲役23年)とした。判決理由を朗読してから主文を言い渡した。
 大久保被告は嘱託殺人罪の起訴内容を認めた上で「(患者の)願いをかなえるために行った」と主張したが、川上裁判長は報酬の130万円を受け取ってから面会に訪れ、15分程度で薬物を投与したと指摘。「真に被害者を思っていたとは考えにくい」と判断した。
 また、死期が迫った患者らからの依頼を受けて、嘱託殺人罪に問うことが相当ではない事案があり得るとしても、ほかに手段がなく、治療や検査を尽くすことなどが最低限必要だと言及。憲法が定める幸福追求権に反するとした弁護側主張を認めなかった。
 判決によると、大久保被告は2019年11月、元医師山本直樹被告(46)と共謀し、ALS患者の女性=同(51)=の依頼を受け京都市内の自宅で薬物を投与して急性薬物中毒で死亡させた。11年3月には山本被告らと共謀し、東京都内のアパートで同被告の父靖さん=当時(77)=を何らかの方法で殺害した。 (C)時事通信社