治療・予防

海・川の事故を予防
~釣りと子どもの水遊びに注意(亀田総合病院 不動寺純明救命救急センター長)~

 海や川では、水難事故に要注意だ。警察庁によると、2022年に発生した水難事故は1346件で、事故にあった人数は1640人。このうち死亡・行方不明者数は、約44%の727人だった。

 「水難事故は、岩場や堤防のように転落の危険がある場所や、海や川の急流を避けることなどで、かなり防げます」と亀田総合病院(千葉県鴨川市)の不動寺純明救命救急センター長は話す。

胸骨圧迫の方法

胸骨圧迫の方法

 ◇ライフジャケットを

 水難者を年齢層別に見ると18~65歳未満が約半数を占め、次が65歳以上の約32%。だが死亡・行方不明者は65歳以上が約51%で最多、18~65歳未満は約37%だ。高齢者の事故は死亡につながりやすいことが分かる。

 さらに死亡・行方不明者の事故発生時の行動を見ると「魚捕り・釣り」が約26%と最も多い。「おそらく65歳以上の高齢者による釣りでしょう」

 「18~65歳は海水浴やマリンスポーツ中の事故が多いと考えられます。予防策として、釣りやボート乗り、マリンスポーツの際はライフジャケットを着用しましょう」

 死者・行方不明者の水難事故の発生場所は海が約50%、河川が約34%だが、中学生以下に限ると河川が約54%、海が約15%と逆転する。つまり子どもの場合、川ではより注意が必要だ。

 中学生以下は「水遊び」中に死亡・行方不明となる率が約42%と最も高い。「周囲の大人が子どもから目を離さないことが肝心です。川は急に深くなったり流れが速くなったりします。大人でさえ流れが速いと水深30センチ程度で足をすくわれます。小さな子供は、ビニールプールの10センチの深さでも溺れる場合があります」

 天気の急変や、降水量の増加による河川への影響も要注意だ。

 ◇救助を呼んで胸骨圧迫

 自分が溺れたときは、大声で助けを呼んだり、立ち泳ぎで手を振ったりするような行動は良くない。「体力を消耗すると溺れます。ラッコのように少し体を丸めて、水面に浮かぶ木などにつかまりながらあおむけで呼吸し、救助を待つことです」

 溺れている人を発見したときは、1人で助けるのは危険。水深が深いと、溺れている人にしがみつかれて水中に引き込まれる可能性があるからだ。119番に連絡して救助を待つ間はペットボトル、クーラーボックスなど浮くものやロープなどつかまれるものを投げ込む。

 水から上げることができた場合は、意識がなければ胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う。「胸骨圧迫によって救命率は大幅に上がるので、経験の有無にとらわれずぜひ行ってください」と不動寺センター長はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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