治療・予防

長湯は禁物、20分以内で
~入浴中の熱中症目立つ(千葉科学大学 黒木尚長教授)~

 高齢者が入浴中に体に異変を感じた場合、浴槽に長く漬かり過ぎたことによる熱中症の可能性が高い―。千葉科学大学(千葉県銚子市)危機管理学部保健医療学科の黒木尚長教授は「特に高齢者は熱さを感じにくい。浴槽に漬かるのは20分以内にしましょう」と呼び掛ける。

入浴で具合が悪くなった原因

入浴で具合が悪くなった原因

 ◇体温が40度になることも

 風呂場での事故といえば、暖かい部屋から寒い浴室に入ったときの急激な温度変化により、体が変調を来す「ヒートショック」が知られている。 ただし、黒木教授が住宅設備大手LIXIL(リクシル)の協力を得て65歳以上の3000人を対象に実施したアンケートでは、入浴で具合が悪くなった323人のうちヒートショックが疑われたのは23人(7.1%)。これに対し、熱中症(疑いを含む)は272人(84.2%)に上った。

 「異変や事故の原因には熱中症の方が多いのです。入浴で体温が上昇するのは体に良いといっても、39度以上になると、重症熱中症になり意識を失うことがあります」

 体温37度の人が41度の湯に33分漬かると、体温は40度に上がり、湯が42度なら、26分で40度に達するという研究結果がある。

 それぐらいの時間、湯に漬かっていれば、のぼせて汗が大量に出そうだが、「高齢者は熱さを感じにくく、頭痛動悸(どうき)といった熱中症の症状も出にくいです」。熱中症に気付かぬまま浴槽に漬かり続け、急に意識を失ったり心臓が動かなくなったりして溺れる恐れがある。

 ◇家族から声掛けを

 「入浴中は体温の過度の上昇を防ぐ心掛けが大切です」と黒木教授。浴槽に長く漬かり過ぎないよう、20分以内に抑えるのが目安という。

 「入浴前に同居する家族らに言っておくこと。家族も30分以上経過するようなら、『そろそろ上がったら』と声を掛ける必要があります」。異変を感じたら、迷わず救急車を呼ぶ。

 酒に酔った状態で風呂に入ったり、浴槽内で居眠りをしたりすると長湯になりがちで、好ましくない。近年ブームとなっているサウナについて黒木教授は、複数人で利用し熱中症に注意を払うよう助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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