治療・予防

男性も骨粗しょう症に注意
~患者の2割強占める(千葉大学医学部付属病院 江口和特任教授)~

 骨がもろくなる骨粗しょう症は、骨折や介護のリスクにつながるなど、健康寿命への影響が指摘されている。日本の骨粗しょう症患者は1300万人程度。閉経後の女性が多いが、男性も2割強の約300万人を占めるとされ、男性も注意が必要だという。千葉大学医学部付属病院整形外科の江口和特任教授に聞いた。

ゆっくり行うスクワット

ゆっくり行うスクワット

 糖尿病や多量飲酒で

 骨は、骨を作る骨芽細胞と、骨を溶かして破壊する破骨細胞がバランスよく作用して、新陳代謝を繰り返している。しかし骨粗しょう症では、このバランスが崩れて破骨細胞の作用が強まり、骨量が減って骨がスカスカした状態になる。

 女性では、月経や妊娠に関わるエストロゲンというホルモンが骨芽細胞の働きを活発にするが、閉経後にエストロゲンの分泌が減少することで骨粗しょう症のリスクが高まる。一方、男性では糖尿病などの病気や、飲酒量の多さ(ビールなら男性で1日にロング缶1.5本程度以上)、喫煙などの生活習慣が背景に潜むケースが多いという。骨粗しょう症が悪化すると太ももの付け根の大腿(だいたい)骨頸部などを骨折しやすくなるが、「大腿骨頸部骨折から1年後の死亡率は、女性よりも男性で2倍も高いと言われています」。

 骨粗しょう症の自覚症状はほとんど無く、軽い衝撃による骨折などをきっかけに、X線撮影や骨密度測定の検査をして診断される例が多いという。しかし、「特に男性患者では、心血管疾患などで心臓の血管が石灰化していたりすると、骨密度が低く算出されない事例も散見されます。病気に気付かず治療が遅れる懸念があります」。

 ◇握力低下は受診の目安

 骨粗しょう症患者が骨折したときには既に病気が進行しているため、発症予防が極めて重要となる。

 「女性と同様、男性でも下肢の筋肉量の減少が骨粗しょう症のリスクになると分かってきました。下肢の筋肉量と筋力を高めるトレーニングが、骨粗しょう症予防に効果的です」。例えば、スクワットなど筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行うレジスタンストレーニングなどだ。「週に1、2回で構わないので、1日8000歩を目安に歩くこともお勧めです」。また、カルシウムやビタミンD、タンパク質を多く含む食品の摂取も欠かせない。

 さらに、「握力が弱いと骨密度が低い傾向や、それによる背骨(椎骨)の骨折リスクが高まります。握力の目安は、女性は片手18キロ以下、男性は26キロ以下。握力の低下を感じた場合は、整形外科で骨粗しょう症の検査を受けましょう」と、江口特任教授は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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