骨密度アップで骨折予防
~運動と食と服薬(伊奈病院 石橋英明副院長)~
要介護の原因になることが多い骨折。特に女性の場合、認知症に次いで多い原因が転倒・骨折だ。「できるだけ骨折せず、自分で歩くことのできる人生を送るためには、運動と食事に気を付け、必要なときは薬をしっかり飲んで骨量を増やすことが大切です」と伊奈病院(埼玉県伊奈町)の石橋英明副院長は話す。
日光を浴びながら有酸素運動をするとよい
◇加齢と閉経で骨量減
骨量は男女とも20代までは増え続ける。男性は60歳前後まで同程度を維持するが、その後は減少する。女性は閉経が始まる40代半ばから15~20年間で激減し、その後も減り続ける。
「骨は常に破骨細胞が古い骨を溶かし、骨芽細胞が新しい骨を作る新陳代謝を繰り返しています。しかし、閉経期は女性ホルモンの減少で破骨細胞の働きが活発になり、骨がどんどん溶けて骨量が急激に減っていきます」
骨量が減れば骨折しやすくなる。骨量の指標である骨密度検査で、若年成人の平均骨密度より30%以上減少している場合、骨粗しょう症と診断される。骨粗しょう症に多い骨折部位は肩、脚の付け根、手首と背骨だ。
骨粗しょう症のリスク要因は運動不足や栄養不足、喫煙、糖尿病、肺気腫など。「骨密度は7割程度が遺伝で決まると言われているため、運動や栄養に気を付けていても骨が弱い人がいます」
◇50代で骨量測定を
骨量を増やすには20代までに骨の「貯金」をしておくことと、閉経期・中高年期に骨量低下を抑える努力が重要だという。「運動と栄養摂取が大切ですが、骨量が減り始める50代のうちに、自治体の健診などで自分の骨密度を知っておくとその後の目安になるでしょう」
骨は負荷や衝撃をかけると強くなる。そのためウオーキング、ジョギング、筋力トレーニングなどの運動がお勧めだ。ジャンプや縄跳びも効果的だという。
栄養素はタンパク質、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを意識的に摂取する。骨はタンパク質とカルシウムでできているが、タンパク質を構成するアミノ酸のうち人の細胞では十分に合成できないのが必須アミノ酸だ。食品から摂取する必要があり、肉、魚、牛乳、卵、大豆に多く含まれる。
カルシウムが豊富で日常的に取りやすい食品は牛乳、サバ水煮缶、小松菜など。ビタミンDは日光を浴びると体内で作られるが、冬場は日光が不足するため魚とキノコ類を積極的に取るとよい。ビタミンKは納豆や緑色の葉野菜に多い。
「骨折リスクが高い人は運動と栄養摂取に加え、専門医を受診して治療薬も検討しましょう」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/07/28 05:00)
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